短編集
「おかえり」と「いってらっしゃい」【TOV】
設定としては
・ユーリが騎士団をやめた後
・主人公はユーリとフレンの幼なじみ
・なんであろうとフレン夢
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それはぽかぽかとした陽気の日。
普段めったに会う事のない人と再会した。
「おかえり」と「いってらっしゃい」
「今日もいい天気だなぁ……」
ユーリが騎士団を辞めてこの下町に帰ってきた。
なんで辞めたのか、なんて理由は聞いていない。それに聞こうとも思っていない。それはいまも、これからも。
いや、だって聞いたってよくわかんないだろうし。そもそも聞くのとかめんどくさいし。だから、なにがあったかなんて知らない。
知らないから普段と同じ日常を過ご――
って。
「なんでフレンがいるの!?」
下町と市民街をむすぶ唯一の坂道(ここってダッシュで登ろうとすると疲れるんだ)に見知った人影がひとつ。
あの雰囲気はフレンだ。
「僕がいちゃ駄目なのかいカナ?」
「いや、駄目ってわけじゃない……と思うけど」
「ここは――僕の帰る場所でもあるんだから」
そう言って、フレンはここから見える下町を見回した。まあ、そうだよね。フレンだって下町出身なんだから当たり前か。
あ、待てよもしかして……。
「フレンまで騎士団やめたの!?」
まさか、あの真面目が取り柄で最後まで信念を貫き通すようなフレンまでもが騎士団辞めちゃったの!?
ユーリならあり得るな、って思ったから辞めた理由を聞いていないけどフレンになると別問題!
騎士団ってそんな危ないとこだったのね。
これはちゃんと理由を聞かなくては。
「話が飛躍すぎるよ、カナ。僕は帰る場所って言っただけで」
「あれ?じゃあ、辞めてないんだ?」
「辞めてないよ……それに僕の格好」
そう言われ、フレンの服装を見る。
あ、ほんとだ…騎士団の服装。
「辞めてその格好だと騎士団に喧嘩売ってるね」
「そういうこと……。ねぇ、カナ」
「なに?」
「ユーリは、どうしている?」
「えーっと……寝ているんじゃない?もしくは雑用に駆り出されてるか」
普段のユーリだったら間違えなく寝ている時間。だけど、今日はおばさんが忙しいって言ってたからそのせいで雑用をしているかもしれない。
「用事があるんなら呼ぶよ?」
ユーリはどのパターンにしても暇だろうし。もし、手伝いとかしていたとしても、フレンがいるからって言えば大丈夫だと思う。もしも「いやだ」なんて言っても気絶させてここまで連れてくるよ!
だから呼んでもいいと思うんだよね。
「呼びにいくよ」と言って体を方向転換。
だけどフレンは「いや、いいんだ」って言った。
「ユーリに『前に進め』って伝えておいて」
「う、うん?(自分で言えばって思うんだけど)」
「カナ――君もだよ」
えっ……私も?
ユーリに言うのはわかるけど私も?
「よくわかんないけど、了解!わかった」
実際、なんで私にまで『前に進め』なんて言葉をくれたのかは理解不能。
だけどそう言うと、フレンは私から背を向けて市民街へとまた帰って行った。
「そうだ、フレン!」
私の言葉に反応して、フレンが振り返った。
「おかえりなさい、いってらっしゃい!」
久しぶりに帰ってきたフレンに「おかえりなさい」
また去って戻ってゆくフレンに「いってらっしゃい」
元気よく手を振ってみると振り返してくれた。
「いってくるよ、カナ」
フレンは私に笑顔でそう言ってくれた。
(おかえりなさい、いってらっしゃい)
久しぶりに見た、もう一人の幼なじみは前に見た彼とは少し違った感じがした。
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