短編集
まいたけと一緒!【TOV】
まいたけと一緒!
この、帝国騎士団で一番偉い人――帝国騎士団長に就くアレクセイ・ディノイアはきっと危ない人なんだと思う……。
巷――というか世間一般ではアレクセイを尊敬している人のほうが絶対に多いけどね!
だけど、私は違うんだ。前者の“危ない人”だと思う。
だって彼は――。
「まいたけ政権!」
なんて言ってるんだから!
※正解…舞い飛べ聖剣!
「騎士団長……まいたけ政権はないと思います」
はぁ、とため息をつきながら文句を言う。言ったって無駄なんだから――そんなのわかりきっていること。
あぁ、こんな人が騎士団長だなんて笑っちゃう。
だってまいたけ崇拝者。どう頑張って、足掻いてもまいたけ崇拝者。これは変わりようのない事実。
「何を言うか、カナ!」
ううっ、耳元に響く。声が大きいよ、騎士団長。
……あぁ、始まった。こうやってまいたけについて否定をすると文句を熱く語ってくる。
「あー、今日もまいたけについて教えてくれるんですね」
ここでお断りしたってどうせ語ってくるんだから聞いてあげましょう。騎士団長様のまいたけへの“愛”を。
どれだけあなたがまいたけを愛しているのかを
ほんと飽きないのかな?
「いいか。まいたけとは……」
……まだ最初なのに眠たくなる。
まいたけについて聞くのって何回目だろ?
数えてみようと試みたけど、回数が多すぎてわからない。
「聞いているのか、カナ?」
「……聞いていますよ、騎士団長。まいたけがどれだけ素晴らしい存在なのかを私に教えてくれているのですよね?」
「わかっているのならいいんだ……!」
「――続きをどうぞ」
言わなくったって語ってくれるんだけど。とりあえず、言っておく。
早く終わらないかなぁ、この話。
もしくは誰かこないかな?来てくれたら逃げることができるんだけど……。
フレンが来てくれれば、バトンタッチ!って感じで交代できるんだけど。
こういう時に限ってこないんだよね。
「そうだカナ」
「なんです、騎士団長?」
「君にこれをあげよう」
こ、この展開は
騎士団長は私に背を向け、後ろにある大きな箱からアレを取り出す。
この箱は――。
どう見たってアレが入っている箱だよね。
いらないんですけど――なんて口が裂けても言えないよ。
差し出された、騎士団長の手のひら……ではなく騎士団長の手のなかにはひとつの袋。
「ありがとうございます」と思ってもない言葉を口にして中身を確認する。
……あぁ、やっぱり
「まいたけだ」
爽やかに、明るい口調で騎士団長は答えてくれた。
そう、袋の中には大量のまいたけ。
こんなに貰っても私食べれないよ。
というか……――。
「失礼ですが、騎士団長……先日も戴いた気が――」
そう、私はつい先日もこれと同じ量のまいたけを貰っている。
それなのにまたまいたけ?
どれだけあなたはまいたけを栽培しているの?って聞きたくなる。これって自家栽培だよね?
どこでこんな大量のまいたけを栽培してるわけ。
「そんなのは関係ないんだ……まいたけは世界を救うのだよ」
いや、意味がわからないんですけど。
まいたけが世界を救ってくれたら騎士団なんていらないと思いますよ。
仕方ない……。
このまいたけはまた、ルブラン小隊長やデコボコやソディアやフレンとかフレンとかフレン(以下エンドレス)に全部あげるか。
「騎士団長、まいたけについて教えてくれるのは嬉しいのですが……そろそろ仕事に戻られたほうが良いのでは?」
これじゃいつまでたっても終わらない!
いつまでもまいたけの歴史だの蘊蓄だのを聞かなければならない。
奥の手を使って逃げた。
.
せっかく、まいたけ生活に終止符を打つことができると思ったのにな
また、まいたけ生活に逆戻り
これじゃいつまでもまいたけと一緒に生活だよ
騎士団長がくれたまいたけレシピ本が役にたちそう――な気がしてきた
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