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短編集
殺人シェフ【TOS】

彼女が料理を作ると、それはそれは素晴らしく美味しくないという。

彼女の料理はある意味『凶器』



殺人シェフ





誰も言いたくない言葉。そしてできれば、回避したいこの現実――。

それはとても深刻な問題だった。ある意味これは死活問題だ。
生か死か……デッドオアアライヴ――


それくらい、彼らにとっては重要な問題。


(誰も言わないでよ、今日の当番が姉さんだなんて)
(わかってるよ、ジーニアス!わたし口が裂けても言わないから)
(俺もだ。ドワーフの誓いを破ってでも守る!カナもその勢いだろ?)
(もちろん!)

彼らは固い約束を交わしていた。ロイドなんてあの、ドワーフの誓いを破ってでも守ると言っている。カナだってロイドと同じような意気込みだ。
何が何でもそれを忌避しようと。こんな未来は嫌だと(彼女本人の耳に入ると雷が堕ちてくるのは承知の上で)

彼らが回避したい結末――それは、



リフィルが作る料理を食べる。



これをなんとか回避したかった。何が何でも避けて通りたいのだ。
リフィルが作る料理には「普通はこんなのいれないだろ」といった食材が多く入っている。そのせいもあるのか……誰の口にも合わない。
だからこうやって、『先生の料理を回避しよう同盟』を組んでいるのだ。
「具体的にどうやって料理から逃れるか」をロイドたちはあーでもない、こうでもないと話し合いをしているとそこにひとつの人影が見えた。

「あれ、ロイド……こんなとこでどしたの?」


「あ、コレット!コレットもわたし達の同盟に参加しない?」
「同盟――?」
「そう、同盟。大きな声じゃ言えないからコレットこっちにこい」
「う、うん」

ロイドがコレットに手招きをする。
大きな声で言えないというロイドの言葉を疑問に思いながらも、コレットはロイドの隣にやってくる。そして、彼らと目線を同じようにするためにちょこんと座った。

「うーんと、どんな同盟なの?」
「耳、貸してコレット」



コソコソと同盟理由をコレットに伝える。最初は「うん、うん」と聞いていたコレットの顔色が次第にかわっていく――。




「えっと、それは先生に失礼じゃないかな?」

「それは承知の上だよ、コレット!」

全て聞き終えたコレットはおどおどとした様子で言うとジーニアスがわかってる、と言った感じで言葉を返す。姉に対して失礼な事をしているというのは承知の上。だけどそれでも、食べたくないのだ。

「俺たちも命懸けなんだよ」
「そう!くだらないって思われるかもしれないけど命懸けなの」


ジーニアスに続けと言わんばかりに、カナやロイドも言葉を続ける。ここまで言われるとコレットも否定することができず……。

だけど、ここまで力説されると伝えたい事実を伝えていいのか――。そんな風に、悩む。
だけど、ここまで力説されると言わなければ……。


「あのね、3人とも。言いにくいんだけど――



もう、先生料理しちゃってるの」


「……」

同盟を組んでいる3人唖然。
固まって何も言えない。

「たぶんね、そろそろ先生が呼びにくると思うよ」



同盟失敗。






.
(……ジーニアス、先生の声がするよ!)
(そんなのわかってるよ、カナ)
(先生が「今日のカレーは栄養たっぷり」とか言ってるんだけど……)
(ね、言ったでしょ?先生はごはん作っちゃってるって)

(なんでコレットは平気なのー!?)




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