短編集
アオイハル【TOV】
アオイハル
(にあわないね、おっさんてば)
今にも爆笑しそうな彼女の顔があった
必死に笑いをこらえている彼女の姿が……
「あーりーえないー!」
いや、人の顔を見た第一声がありえないとかなくない?
ふつーはないよね。おっさん全否定されたみたいでショック〜
「あのねぇ、その言葉はなしでしょ」
「ストレートに言っただけだよ」
とうとう笑いをこらえる事ができなくなったのか、声をあげていや……腹を抱えて笑いはじめた
目の前の光景を楽しむがごとく
普段見れないものを見れた、
そう彼女は涙目(相当笑えるらしい)でレイヴンに言う
当のレイヴンは文句をこぼしながらもあるもの(いや、ものじゃないのかもしれない)から目が離せないでいた
「いたたたっ!」
そう言ってレイヴンは自分の膝元に目をやった
そこにはかわいらしい小動物が一匹――
レイヴンとじゃれ合っていた
何が気になるのか……ぴょんっと彼の膝で飛び跳ね爪をたて攻撃する。ひっかかれるような形になりレイヴンは思わず「痛い」と小動物を引き離す
「懐かれてるね、おっさん」
「うーん……おっさん大人なおねーさんは大感激なんだけどねぇ」
「いいじゃない、子猫だって立派なレディでしょ?」
「れ…レディって。カナちゃんにはこの子がそう見えるわけ?」
「うん」
もちろん、だって女の子でしょ?と付け加える
ツンッとカナは子猫の鼻を触ろうとした。すると子猫はふいっとそっぽを向いた
「かわいくないなぁ」
「そりゃカナちゃんが鼻を触ろうとするからでしょーに」
ねぇ、なんて言いながら子猫の顎を撫でてみると子猫は気持ちがいいのか一言鳴いて、目を細める
「やっぱりおっさんってば女の扱い慣れてるわ」
感心の言葉をあげると大きく首を縦に振った
「おっさんは大人な女性が――」
「子猫だって立派なレディだって」
レイヴンの言葉を一蹴するようにカナはレディを強調する。そう言えばレイヴンはボソボソと独り言をはじめた
「おっさん的にはカナちゃんとか大歓迎なんだけどなー?」
「……なんの話?」
「いや、これがカナちゃんなら、おっさんは両手を広げて歓迎するのに――!?」
ヒュン、と短い音と共に、彼女愛用の短剣が足下に刺さる
「お、おっさん!変なこと言わずに、その子猫と静かに遊んでなよ!私はエステル達のとこ行くから!」
慌ただしく言うと、彼女は走り去っていく
「若いね〜。……これは脈ありかな、子猫ちゃん」
子猫を抱き上げながら聞けば、意味を理解してるのか短い鳴き声が帰ってくる
(軽い冗談に真っ赤になった君は……)
おっさん、青い春かねぇ…
※主人公は短剣使いの女の子
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