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短編集
白と、黒・昔と、今【TOV】

いつまでも真っ白だと思っていた。
いつまでも柔らかい笑みを浮かべる人だと思っていた。

『白』
が似合う人だと。




白と、黒・昔と、今


私の中の、私の記憶にいる彼は真っ白なイメージだった
もう一人の彼のように、皮肉めいた事を言わない
まあ、それも……数年前の"彼"ならば、であるが――。



「フレン、変わったね」

目の前の騎士に小さく呟く。久々に会った
ユーリはたまーに会っていた感じがするけど、私はかなりのお久しぶり。
フレンとユーリが騎士になると飛び出したのが数年前。ユーリがなぜか下町に戻ってきたのが数年前のちょっとあと
そのあと、フレンと会った――と言っても、二言三言会話しただけ。そしてここ最近は全く会っていない
だからかなりお久しぶりのご対面。

変わったね、
そう言うと彼は彼で「そうかい?僕は変わってないつもりだけど」と何時もと変わらぬ調子
……ふふー、そうくるかぁ。ここは変わってないないなぁ、フレンさん。いつものような爽やかな笑顔
まあ、……普段のフレンは変わってないんだ
ユーリとなんでもはんぶんこにしていたあの時のフレンと
優しく手を差し伸べてくれるあのフレンと

でも、それでもやっぱり変わったとこはある

そう例えば――


「身長とか、変わった。前はこんなに差なんてなかったのに!」

フレンとの身長差を示すため、めいっぱい腕を伸ばす
むかしは私のほうが高かったときもあったのに

「それいつの話?だいぶ前な感じするけど」


クスクスと笑うフレン

「だけど昔は私のほうがおっきかったし!」

「でもそれは"昔"でしょ?」




******
久々に出会った彼女は変わってないな、と思った
喜怒哀楽の激しい彼女の表情。ほら、いまなんて怒っている。そりゃユーリにたまに会うと、彼女はどうかとか聞いた
聞かなくてもユーリが教えてくれることもあった
だけど、それは話を聞いただけ。変わっていないと聞いてはいても、会ってみるまでわからなかった


会ってみて、
変わっていない彼女に出会いほっとする自分がいた
そんな気持ちになっていると僕の感想とは真反対な言葉が


「変わったね、フレン……」

「そうかい?」

なんて問えば少し哀しげな表情で「うん」という
僕自身、自分が変わったなんて思ってなどいない。どこが変わったかなんて――自分ではわからない
だけど彼女――カナ、もう一人の昔馴染みに言わせれば変わったらしい

「昔は――」


何を言い出すのかと思えばそれはそれで笑えることだった
彼女らしい、とでもいうべきなのか……


「身長、変わらなかったのに!」


ほら、このくらいしか差はなかったと両腕でそれを表すカナ



ほんっっと、変わっていないな君という存在は
そんな彼女を見ていると自然と笑いが零れた


――なぜ、変わらない彼女に会いほっとする自分がいるのか……


わかった気がする。



(カナがいれば、)
(昔みたいに笑える気がする)


――ほら、3人でまた、笑いあえる
そんな気が……




(ねぇ、フレン!)
(なんだいカナ?)
(ちゃんと話聞いててくれた??)
(……もちろん聞いたよ?)
(聞いてないくせに!ユーリに言いつけてやる)




そんな所まで変わらない。

変わらない君と変わった僕。

それでもこうやって、笑いあえる

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あきゅろす。
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