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短編集
彼の好み【TOD】

意外すぎて、それを知ったときは笑った
だって……ほんと、有り得ないんだもん
だけど、可愛らしいなとも思った
(それは本人に、内緒)






彼の好み






「……寝れない」

みんなが寝静まっている夜中。眠れなくて、ふとんにもぐっていても寝付くことができなくて、こっそり部屋を抜け出した
寝れない原因はきっと昼寝をしたから
そんなお子様みたいな理由


宿屋の廊下は夜中だからか明るくなく、小さな光だけが足元を照らしてくれている
外に出るか、ロビーにいるかと悩みながら歩いているとロビーには先客が。人いた
よーく目をこらしてみればそこにいたのはリオンだった
……さらによーく見てみると手に何かもっていた

あれはなんだろう?片手に容器?
もう片方の手には……スプーン。リオンってば一体何をしようとしてる!?

――こ、声がかけれない



近くに見えるリオンは怪しすぎて、声をかけることができない
かと言って、声をかけずに宿から外にはでれない。だって嫌でもリオンの前を通らなきゃならないし
……こうなると、おとなしく部屋に帰る?それしか手段はない

「仕方ない、戻ろう……」
「誰かいるのか?」


踵を返し、部屋へ歩き始めると……リオンに声をかけられた

「うげっ……!」


小さく、自分でもかわいらしくないと思うくらい変な悲鳴をあげた


「……カナ?」


あー、もう!
仕方ない。こうなると出るしかないだろ

「こんばんは〜」

引きつった笑みを浮かべる。だって、リオンが怖いんだもん!

「何をしている?」

「そういうリオンこそ。いま、何か隠したでしょ?」

さっと、見えないところに手に持っていたブツを隠したのはわかっているんだから
私の同体視力を甘く見るな

「ぼっ……僕は何も、隠してなど――」

「わかってるんだよ、リオン。キミが、手に何かを持ってもう片方の手にはスプーンを持っていたことは!」

逃げようたってそうはいかないんだから。こうなりゃ、何を食べようとしていたのか暴いてやる


「なっ!見ていたのか?」

「いや、見ていたんじゃなくて、見てしまった。別に覗いたわけじゃないし」

こうでも言わなきゃリオンが「ふんっ……お前はストーカーか」とか言ってくるからね!リオンの口は達者だし


「さぁ、何を食べようとしていたのかなぁ〜?」

「やめろ、カナ!」




……あれ?
いや、なんだこれは?




「プリン?」



リオンが持っていた、リオンが食べようとしていたそれの正体

「――笑いたかったら笑え!」

「リオンってプリン食べるの!?ってか私にもちょうだい!」

「……なんでお前なんかにあげなきゃいけないんだ」

「みんなにバラすよ。ルーティに言っちゃうよ」

「……これひとつしか持ってない」

「えー、ケチ。残念。じゃあ、今度買ってよ」

「ケチってなんだよ。そもそもこのプリンは僕のもので」

「ふーん。前にリオンって甘いものなんて嫌いだ、って言ってたよね」

なのに、甘い子どもの大好きなプリンを食べるとか。(しかもこっそりと)
リオンってば、意地っ張りの子どもだ!

『ぼっちゃん、観念してカナにもあげたほうがいいんじゃ?』

「なんでこんなやつにやらなきゃいけないんだ!」


……そんなにプリンが大切なの?
なにそのプリンに対する情熱は?ってかもうひとつプリンを持ってる??シャルティエの言い方からだと持ってるって感じだよね

「くれないんなら、ルーティに言う。きっと言ったら彼女笑うよ。バカにするよ」

「好きにしろ!」




そうリオンは吐き捨てて、自分が食べようと開けていたプリンを私にくれた
まさか、本当にくれるとは……
バレたのがそんなに恥ずかしいのか、なんなのか……そっぽを向いちゃったけど







.
(ほんとにいいの?)
(もうひとつあるから大丈夫だ)
(……ど、どこから出てきたのそのプリン!?)
(ぼっちゃんは常にプリンは2つ持ち歩いてるから)
(シャルティエそれ、ほんと?)
(シャル、黙れ。核壊すぞ。あとカナ真に受けるな、嘘に決まってるだろ)
(……)

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