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中編
きゅー

「潤ちゃっ…はっ…潤ちゃん、潤ちゃん!!」
「うっさい! 聞こえてるって…」


あの後、教室にダッシュで戻って鞄を引っ掴んで、またダッシュで家まで帰ってきた。
帰ってきて早々、部屋に駆け上がり、窓に直行して潤ちゃんの名前を連呼したら、呆れた顔をした潤ちゃんに出迎えられる。
走ってきたから、息も上がっていて若干苦しくて、汗で肌に張り付いたシャツが気持ち悪かったりするけど…そんなのも気にならないくらい今は気分が凄く良い。
窓から体を乗り出して、潤ちゃんの部屋に窓から入る。優しく吹く夜風が火照った体に気持ち良かった。

俺達は、生まれた時から隣同士でこうして昔から窓からお互いの部屋に行き来している。だから、潤ちゃんも俺の行動に別段気にした様子もなく、部屋に招き入れてくれた。


「ほれ、汗を拭け」
「ん」


タンスから取り出してくれたタオルを受け取って、額と首周りの汗を拭く。
ベッドに座るように促された。汗で汚れるかもしれないと戸惑っっていると、気にするなと言われて半ば強制的にベッドに座らされた。
それから大分俺の息も整って一息ついた頃を見計らって、潤ちゃんが声を掛けてきた。


「…で? 本当に何か進展があったのか?」


勉強机の前にある椅子に座っている潤ちゃんに目を向けると…ニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
今は、それも気にならないくらい嬉しくて素直に頷けば、潤ちゃんの表情が一瞬だけ変わる。


「潤ちゃ…「…で、何があったんだ? キス、したとか?」…へっ?!」


でも直ぐに潤ちゃんは、ニヤニヤとした面白そうな笑みを浮かべて、俺をからかい始めた。
誤魔化された気がしなくもないけど、言われた事が衝撃的過ぎて聞くことは出来なかった。


「なっ…違うよ!!」
「真っ赤になっちゃって〜。説得力ないぞ?」
「違うってば!」


必死に否定している俺にキャスター付きの椅子で移動してきた潤ちゃんは、心底楽しそうに真っ赤になっているだろう頬をツンツン突っついてくる。
違うって言ってるのに…!



暫くすると、潤ちゃんは満足したのか頬を突っつくのを止めた。



「悪かったよ、優」


へそを曲げてしまった俺に潤ちゃんは謝るが、ニコニコと笑っている顔には反省の色が見えない。


「潤ちゃんのバーカ」


俺は、そんな潤ちゃんに小さく罵声を浴び続けたのだった。



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