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夜の灯
1-1(1)
――自分はなにをしてるんだろう。
朔は思った。

「あ……」
雨だ。冷たい雨が体を濡らす。男が朔をつれてビルとビルの間に入っていくと朔は怖くなってそこを抜け出したい気持ちになったが、声をかけてきた男はそんな朔の胸中を知ってか知らずか優しい声で、朔の頭を撫でてきた。
「ホントに男?見えないよ」
そう言いながら朔を舐め回すように見下ろす。実際、朔は美しい顔立ちをししていた。色白で髪は真っ黒のくせ毛。目は大きく唇はピンク色。女と間違われてナンパされたこともある。この男も、そうだった。
「とりあえず雨降ってるからホテル行こうか」
「い……いくら、ですか?」
「いくらほしいの?」
お金は欲しかった、痛烈に。はっきり言ってまだ中学生の朔が働ける場所など皆無に等しい。家には絶対帰りたくない。
黙りこんでいると男が朔の顔をのぞきこんだ。
朔は金さえあればそれでいい、でも体を売る以前に抱かれたことは一度もなかった。だからセックスの売り値がいくらなのかなんてまったくわからないのだ。
「きみさ……初めてだよね?」
「だったら、なに――」
「んじゃあビデオ出ねえ?ぶっちゃけ怖いんだろ、足震えてるし」
男の口調が冷たいものに変わわった。背筋か凍る。逃げようと後ずさりしたら、壁に背中を押しつけられた。
「んーっ!んん!」
「かわいいかわいい美少年はな、泣きわめいて犯されたほうが売れるんだよ。金ほしいんならそれくらい考えろって」
「んーん!んや……っ!」
頬をひっぱたかれ、みぞおちを殴られる。ぐらりと視界が揺れて朔は地面に崩れた。
「いや……だっ……」
「もしもし?あのさあ、ホモのビデオにいいガキ見つけたんだけどお」
男が朔の体を押さえつけ、どこかに電話を始めた。抵抗できない、びしょ濡れのまま地面に顔を突っ伏す。
「そう、バージンでかなりびびってるよ。ぜってー売れ……」
「なにしてるんだ、そこで」
男は振り返ると壁に体を叩きつけられ、朔は体がふっと軽くなった。

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あきゅろす。
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