No.002
An encounter with the silver
もうこの牢獄の中で、どれくらいの時が流れたのだろうか。
お腹は空いたし、相変わらず傷が痛む。
幸い誰かが傷の手当てをしてくれたみたいで傷は化膿することはなさそうだが、お腹が空いて仕方がない。
空きすぎて、鳴るものも鳴らないくらいだ。
そんなことを考えていたら、引き戸の開く何かが擦れたような音がした。
足音は徐々に近付いてきている。
あたしは身体をそのままにして、首だけを動かすと誰かが牢獄の前に立っているのが見えた。
「傷の調子はどうだ」
「……………」
「駄目ですよ〜隊長!そ〜んな威圧感のある声で圧倒したら!
ねえ、アナタ。傷は大丈夫?痛くない?」
ズキズキと痛む身体を起こして声の主達を見てみると、あたしより大きいけど低めの声の割りに背の低い銀髪の隊長と呼ばれた少年と、ナイスバディな金髪の優しそうなお姉さんがいた。
「……傷は少し痛むけど、平気」
「そう、よかったわ」
警戒心丸出しのあたしに、お姉さんは笑ってそう言った。
いい人なのかなって、思った。
「ねえ、アナタ、名前は何ていうの?あたしは松本乱菊。こっちはあたしの上司の…」
「…日番谷冬獅郎だ」
「……あたしは、」
どうやらあたしは、斬られてしまってから用心深くなってしまったらしい。
名前を言うだけ…しかも相手はもう名乗っているのに言葉が詰まる。
息が、詰まる。
「…あたし、は」
「ゆっくりでいい」
「そうよ、大丈夫だからね」
銀髪の少年(たしか、トウシロウくん)があたしの前にしゃがんで言った。
その後、金髪のお姉さん(ランギクさん)があたしの頭を一撫でした。
息が詰まる感覚が、薄れた気がした。
「あたしは…天城、緋色…」
「いい名前じゃない!ね、隊長?」
「ああ…そうだな…」
「……ありがとう」
息が詰まる感覚が、無くなった気がした。
白銀との出会い
(優しい人達だった、)
090307
九条雨音
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