No.009
She whom I'm weak, and is strong
技術開発局から出て来た日番谷。
どうやら何か頼んで来たらしい。
技術開発局から出ると、日番谷は十番隊の隊舎へと駆け出した。
□□□
その頃、緋色は書類整備を終えていた。
完成した書類を日番谷の机に乗せ、窓から空を仰いだ。
そんな時だった、日番谷が帰ってきたのは。
息を切らす日番谷を不思議に思いながらも、緋色は小さく笑って声をかけた。
「お帰りなさい、冬獅郎くん」
「あ、あぁ………」
日番谷の視線が泳いでいることに気付き、緋色は不思議そうな顔をした。
ただ、緋色がわかったのは、日番谷が自分を見る目は哀しみに溢れているということだ。
「…そんな顔、しないで」
「っ!」
微笑みながらそう言った緋色に、日番谷は何だか泣きそうになった。
「きっと冬獅郎くん、あたしの話を聞いて調べに行ってくれたんだよね?」
「………あぁ」
「あたしなら大丈夫だから、わかったこと、全部教えてほしいな」
変わらない温かな笑みを浮かべてそう言った緋色に、日番谷はゆっくりと全てを話した。
話し終えた頃には、まだ温かな笑みが残っていた。
だがその笑みには、何処か哀しみが宿っていた。
そんな緋色の顔を見て、日番谷は罪悪感を覚えた。
「教えてくれてありがとう。何だかスッキリしたよ。
でね、冬獅郎くんの話に出てきた宝って…多分“調律の天秤”だと思うの。確か…巻物には、あの世とこの世の均衡を保つために創られたって書いてあったよ」
昔、お父さんに読んでもらったんだ。
そう言って、緋色は窓の外へと視線を向けた。
徐々に溜まる涙を必死に堪える緋色に、日番谷は優しく頭を撫でることしか出来なかった。
弱くて強い彼女
(ただ少し、)
(恋しくなっただけ)
((昔亡くなった家族や))
((もう戻れない日常が、))
090316
九条雨音
←→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!