[携帯モード] [URL送信]

暇人の趣味の部屋一号室(長編小説)
共通ルート 『休日2』

〜繁華街〜

「「はんかがいについたぞ!」」

「仲いいなお前ら」


繁華街に着くや否や、駆け出していってそう叫ぶスバルと内村を見て、俺は率直な感想を漏らした。


「だって繁華街ですよ!?こんな所滅多に来れないじゃないですか!」

「そうなのか?」

「ええ、まぁ・・・そう頻繁に来れる所ではないですけど」


ふむ。

確かに片道一時間以上掛かってはそう来る機会も無いかもしれないな。


「それで、着いたのはいいけど何をするんだ?」

「ふふ・・・あれを見るがよい」


バッと扇を開き、内村が左手を指すので俺たちはそちらへ視線を向ける。

だが、そこにあるのはただの駅前のビル街だ。


「自由行動じゃ」

『何でこっちを向かせたんだよ(のよ・ですか)!?』


総ツッコミだった。

気にせずにパシン、と内村が扇を閉じる。


「各々個人で活動するもよし。団体で活動するもよし。何か面白いものを見つけた者の勝ちじゃ」

「勝ち負けなのか・・・」

「翼さん翼さん!一緒に遊びに行きましょう!」

「いやいやナカジマ(妹)よ。遊びではないと先ほど言ったばかりではないか」


珍しく内村がツッコんだ。


「いいですよね翼さん?」

「・・・むう」


しかしスルー。

内村が面白くなさそうに、ぶすっとした表情になる。

内村も上手くいかないときがあるんだな、とちょっと驚いた俺だった。


「・・・なら、ナカジマ(妹)と翼殿は遊ぶとよい。それではみな解散じゃ」


とぼとぼとつまらなそうに、内村がどこかへと歩き去ってしまった。

皆もそれぞれ散り散りに、どこかへと歩き出す。

・・・果たして、この中で何人が真面目に内村の言うことを守るだろうか?


「いいんですかギンガさん?皆川先輩と一緒にいなくて」

「な、なんで?別に皆川くんは関係ないじゃない」

「え、でもその服とかって皆川先輩の――」

「ち、違うわよ!ほら、行くわよ!」

「あ、ちょ、待ってください!スバル、迷惑かけるんじゃないわよ!」


はーい、と早歩きでギンガを追いかけるランスターに手を振るスバル。


「で、どこに行くんだ?悪いが俺はそんな金持ってないぞ」

「え!?そん・・・いやいや、お金なんて大丈夫ですよ」

「お前確実に金目的だったよな今」

「じょ、冗談ですって冗談!」


スバルが慌てて自分の失言を慌てて撤回する。

女子は恐ろしいな・・・

無邪気な顔で近寄ってきて、男の金を搾り取る・・・


「もの凄い形容しがたい表情になってますよ!?本当に冗談ですから!」

「・・・うん。シンジテルヨ?」

「あああああ!私のばかー!!」


口は災いの元。

それを身をもって実感したスバルだった。

















それから数分後。

俺とスバルは賑わう繁華街へと繰り出した。

まだ午前中だというのに、人が多くあちらこちらから色々な音が聞こえてきている。


「私達って周りからだとどう見えてるんですかね?」


隣で並んで歩くスバルが、おもむろにそんなことを聞いてきた。

身長差のため自然と上目遣いみたいになる。


「うーん・・・まぁ、兄妹かなぁ?」

「ですよねー」


スバルが納得と言わんばかりにうなずいた。


「・・・っとと」


行き交う人にぶつかり、スバルがよろめく。

小柄なコイツは人の流れに逆らうのも一苦労らしい。


「スバル」

「はい?」


ん、とスバルに手を差し出す。

スバルがきょとんとした顔で、俺と手を交互に見比べる。


「え、と・・・?」

「手を繋ごう。はぐれたらまずいだろ?」

「・・・!はい!」


スバルが嬉しそうに笑って俺の手をとる。

その手は少し冷たく、柔らかい。


「・・・えへへ」

「どうした?」

「いえ。こうやって男の人と手を繋ぐなんて、お父さん以外初めてだなーって」


少し照れくさそうにスバルが笑う。

スバルの言葉に、俺も思わずその事を意識して少し顔が熱くなった。


「ったく、何言ってるんだか」

「あはは・・・すみません」

「それで、どこに行くんだ?」

「えーっとですねぇ・・・こっちです!」


ぐい、とスバルが俺の手を引っ張っていく。

・・・これって あんま意味無いんじゃ。

案の定、スバルは人の流れに負け、結局俺が先導することになるのであった。


「す、すみません・・・」

「いや、仕方ないって。んじゃ行こぞ」

「はい!」


スバルの手を引いて、人ごみを掻き分けて進んでいく。

そのままお互いに無言のまま、数分間ずっとただ前に進み続ける。

そうしてふと気づいたが、どこに行けばいいのだろう?


「お兄ちゃんがいたら・・・」

「え?」


ボソッと呟いたスバルの言葉に、思わず振り返る。

すると、そこには何故か嬉しそうに微笑むスバルが。


「私にお兄ちゃんがいたら・・・いえ、翼さんがお兄ちゃんだったら、凄くいいなって」

「・・・え?な、何でだ?」

「だって、初対面だっていうのに私にも優しくしてくれるし、こうやって凄く頼りになるし」

「・・・そうか」


照れくさくなって、スバルから顔を背ける。

スバルはにこにこと笑みを浮かべて、俺をじっと見続けてるようだ。


「・・・で、どこに行くんだ?俺は特に行くところないから、お前に付き合うよ」

「あ、はい!それじゃ――」


――この後、俺はスバルとギンガが姉妹だと言うことをまざまざと見せつけられたのであった。

主に食事量の面で。



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!