[携帯モード] [URL送信]

暇人の趣味の部屋一号室(長編小説)
共通ルート 『休日1』

〜はやての家〜


「へぇ。それじゃあ朝ごはん食べたら、遊びに行くんや」

「そう。夕飯前には帰ってくると思うけど」


ずず、と味噌汁をすする。

はや姉の飯はなんというか、おいしいだけじゃなくて優しい味で、俺の密かなブームになってたりしている。


「それで相談なんだけどさ。服ってどんなの着てけばいいかな?色々持ってきたとは思うんだけど」

「ふ、服?・・・う、う〜ん。正直、そういうの私苦手やからなぁ・・・」


どないしたもんか、と向かい合って座っているはや姉が困ったように頬を掻く。


「しかも男の子の服やろ?私の服とは違うし・・・う〜ん・・・」

「いや、そんな真剣に悩まなくても・・・」


俺が苦笑いを零すと、はや姉が『せや!』と何かを思いついたかのように立ち上がる。


「ちょい待っててな。持ってくるものあんねん」

「持ってくるもの?」


せや、と頷くと、はや姉はパタパタと二階へ上がっていった。

なんだろう、と思いながら、朝食を食べ終えた俺がお茶を飲みながら待っているとはや姉が帰ってきた。

その手にはなにかの雑誌のようなものが握られていた。
 

「それ、もしかしてファッション雑誌?」

「せや。ちゅーても女の子向けやけど。でも確か・・・」


ぱらぱらとはや姉が雑誌をめくる。

その間に俺の分の食器を流しへと運ぶ。


「あった。これやこれ!」


ととと、と近寄ってきて、はや姉が雑誌の見開きを見せてきた。

そこの見出しには『モデルが語る!〜彼氏に着て欲しい服編〜』と書いてあった。

どうやら、この雑誌のモデルの人たちが自分の好きな、男向けの服の組み合わせを発表している、ということらしい。

さっと、その記事に眼を通してみたのだが。


「・・・なんか派手すぎないか?この人らのチョイス」


なんというかカラフルな色の組み合わせ、そして異常にスタイリッシュだったりと確実に特定の人にしか合わないような組み合わせばかりだ。


「・・・せやなぁ。モデルさんの考えとることはよく分からんわ・・・あ、でもこれ見てみてや」

「・・・おお」


そのモデルさんの組み合わせは、なんだかとても万人受けしそうな、それでいて中々いい感じのファッションだった。

ちなみに、そのモデルさんの名前はフェイト、というらしい。

写真は載ってなかったので、どんな人かは分からないけど。


「どや?少しは参考になった?」

「ああ。ありがとはや姉」

「まぁ、私がゆーたわけやないけどね」


はや姉が苦笑いを浮かべる。

俺は自分の食器を洗い終えた後、はや姉にもう一度お礼を言って、出かける準備のために自分の部屋に戻っていった。




















「・・・そっか。今日出かけてまうんか」


翼君が部屋に戻るのを眺めながら、私は一人でそう呟く。

はぁ、と小さくため息を吐き、自分の食器を流しへと運ぶ。


「皆に紹介するのはまた今度になりそうやな」


テーブルの上においてある雑誌の表紙を眺めながら、私はもう一度ため息を吐いた。

表紙を飾る、私の友人を眺めながら。


「さて、と。今日も頑張っていこか!」


ぐい、と腕まくりをして、私は食器洗いに向かうのだった。



















〜校門前〜

時刻、午前九時三十分。

張り切りすぎたのか、三十分前に俺は集合場所である星雲学園の校門前に着いた。

やはりというかなんと言うか、校門前に人の姿は無い。


「・・・早く着すぎたか」

「あれ?私より早く着てる人がいるー!」

「驚いたわ。アンタより早い人がいるなんて」


と、思ったのだが、誰かやってきたようだ。

・・・しかし、全く聞き覚えの無い声なんだが。

振り返ってみれば、本当に見覚えの無い私服姿の女の子が二人いた。


「こんにちは!あ、違った・・・おはようございます!新聞部の方ですか?」


黒髪ショートカットの子の方が、人懐っこく俺に近寄る。

もう一人の、橙色のおさげの子の方は俺のことをじっと見つめ、観察しているようだ。


「ああ。まぁ、最近入ったばかりだけど」

「なるほど。ということは貴方が皆川翼さんですね?」

「・・・そうだけど。何で俺の名前を?」


記憶が正しければ全くの初対面のはずだが。


「はい!ギン姉から、いつも翼さんの事は聞いていますから」

「ギン姉・・・?・・・ナカジマの事か?」

「はい!あ、自己紹介遅れました!私はスバル・ナカジマと言います。ギン姉の妹やってます!」


よろしくです、とナカジマ(2)がお辞儀をする。

・・・うーん。名前呼ぶときどうすりゃいいんだ?

どっちもナカジマじゃ紛らわしいしなぁ・・・


「私はティアナ・ランスターです。よろしくお願いします、皆川先輩」

「ああ、よろしく」


・・・ランスター?

どっかで聞いたことがあるような・・・どこだったかなぁ?


「いやーまさか私より早い人がいるとは思わなかったなぁ〜。あれですか?翼さんも遊びに行くのがわくわくしたってくちですか?」


ナカジマ(2)の声に現実に引き戻される。

目の前には、んふふと笑うナカジマ(2)の姿が。



「ちなみに私は、部活の朝練のときより早く起きちゃました」

「いや、それは早すぎだろ」


ドヤ顔でサムズアップするナカジマ(2)に、すかさず俺はツッコミをいれた。


「・・・それに付き合わわれる方も考えてほしいわ」

「・・・苦労してるんだな」


俺の周りには苦労人が多いのは何でだろう?

はぁ、と小さくため息を吐くランスターに少しばかり同情する俺だった。


「いえ、もう慣れてますから」


苦笑いを浮かべるランスター。

・・・なんとなくだが、ランスターの表情からこの二人の関係が分かったような気がする。


「そういえばナカジマ・・・あー、姉の方は何で一緒に来なかったんだ?」

「いやー、誘ったんですけど、なんか色々と準備があるみたいで。・・・いつもは私が誘ったら渋々でも付いて来てくれてたんですけど」


なんでかなー、と首を傾げるナカジマ(妹)。



「お待たせー・・・って、あら?皆川君も着てたの」


噂をすればなんとやら。

私服姿のナカジマ(姉)がやってきた。

今日は学校の時とは違って、長い髪を後ろで纏めていた。


「あ、ギン姉!・・・あれ?なんかいつもより気合い入ってない?」

「そ、そう?そんなことないわよ」

「えーだって。外出かけるとき髪を纏めてるの見たことないし。それにその洋服だってこの前買ったばかりだし」

「た、たまたまよ。今日はそういう気分だっただけ」

「・・・ふ〜ん?」


なぜか慌てるナカジマ(姉)と、それ見て不思議そうに首を傾げるナカジマ(妹)。

そして、その二人を交互に見て、なぜか頷くランスター。

・・・うむ。


「ナカジマ」

「はい?(な、なに?)」


二人が反応した。

そっか、二人ともナカジマだっけ。


「んじゃ、ギンガ」

「え、わ、私?な、なにかしら」


ギンガが、俺の話を聞こうと向き直る。

あー・・・本当は恥ずかしいんだが・・・

母さんに言われ続けてきたことだしなぁ・・・


「・・・その服、似合ってると思うぞ」


素直に、ギンガの私服姿を見た感想を述べた。

ギンガは一瞬きょとん、と呆けた後、言葉の意味を理解したのか、顔を赤らめる。


「そ、そう?あ、ありがと・・・」


ギンガが恥ずかしげに俺から眼を逸らす。

が、時折こちらの様子を伺うようにちらちらと俺を見ている。

・・・うわ。自分で言っといてめっちゃはずいわ・・・

俺も自分の顔が熱くなるのを感じた。


「これはこれは・・・なるほどねぇ〜」


隣ではスバルがにやにやと俺を見つめていた。


「おお、皆すでに揃っておったか。・・・む、なんじゃこの雰囲気は?」

「何かあったのかい?」

「いや、別に・・・」


それから内村とグリフィスがやって来たのは、数分後のことだった。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!