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少しだけ観察

「良いか?うちの料理店は別に一流を目指してるわけじゃない、うちの料理を楽しみにしてきてくれた客が満足できるような料理を出せればそれで良いんと思ってるし料理だってスッゲー料理じゃなくていいんだよ…【頑張れば家でも作れるけどやっぱりここで食べたい!】って思ってくれるような程度の奴で良いんだ」

俺はこの言葉を何度も繰り返し言っている。

「でも!!だからってあんなに馬鹿にされてて黙ってるのなんて…」

今回俺がそう言わなきゃならなくなったのは近所に新しくできたレストランが原因だ。

事は数時間前。

一人の男がうちの料理店に来た。

「なんだなんだ、随分ショボイ店だなぁおい」

店に入ってくるなりそう大声で叫ぶその男。

「いらっしゃい、一番奥のテーブルにどうぞ―」

カウンターから声を出して一応案内をする。

「はっカウンターから声だけとは随分舐めた店員だなぁおい」

声を掛けた俺を嘲笑いながら席に着く男に苦笑する。

「すみませんねぇ…」

一応謝ってメニューを差し出す。

男は舌打ちを一つするとメニューを開く。

「…ぷ、くはっあーっはっはっはっはっは!!なんだぁ?この料理はぁ」

チラリとメニューを眺めると大声で笑い始めた。

「うちのメニューが何か?」

そんなに笑われるような料理は出していない筈だが…

あ、でも卵かけご飯とかはある…か?

「ひーひー、あ〜腹がいてぇ…」

男の態度はまぁこの店ではなくもない事なのでそこまでイラついてはいなかった…

だが他の店員と客はそうではないらしい。

「まぁ良い、この店じゃあうちが気にするほどの価値がない…精々うちのレストランに潰されないように胡麻を擂るんだな」

にやにやと笑いながら店を出ていく男。

「また来いよ〜」

俺がそう良い扉を閉めれば店の中が一気に騒がしくなった。

「何なんだよあの男!!!!」

「ほんと何様って感じ!!」

「うちのレストランって言ってたけどどこのレストランだ!?」

「多分最近この辺にできた奴だよ!!友達が美味しいけどなんか微妙って言ってた!」

「私絶対あそこに行かない!!!」

「店長!あんなの気にすんなよな!!」

次々に文句を言いだす常連の客に苦笑する。

「元から気にしちゃいねぇよ…勝手に言わせときゃいい、ここの良さを知ってくれる奴が一人でもいれば俺は嬉しいからな」

最後に少し微笑めば大体の客は落ち着いてくれた。

「まぁ、店長がそう言うなら…」

「私達はここのファンみたいなもんだからね〜」




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