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07 I loved you incredibly.
―嘘みたいに愛してた。







縁側がお気に入りの場所だった。
冬はコタツが好きならしく一日中コタツの中にいた。
でも一番好きな場所は俺の側だと言って俺が家にいる時は必ず側にいた。

にゃあと甘えて膝に乗ろうとしてくるから苦笑して、重いから頭だけな、と膝枕してやったっけ。

俺の腰に抱き付いて離れようとしない。


――捨てないで。


泣きそうな声で呟いて、


――捨てる訳ねぇだろ。


そう言って頭を撫でてやる。
愛してる。お前が愛しくて仕方ないんだ。
自分で自分をコントロール出来ない。


――トシ……。キス、して…。


怖がらせないようにゆっくりと触れるだけのキスを、唇を離して様子を見て深い口付けを。
乱暴にしたら壊れてしまいそうで怖かった。


















07_I loved you incredibly.(嘘みたいに愛してた。)





















猫のくせに後ろからするのを嫌う銀時。


「やだぁっ、これ…怖い……」


あんまり泣くからひっくり返して顔中にキスを落として、意地悪してごめんな、と安心させる。
必死に腕を伸ばして俺に抱き付いて離れない。
こっちとしては動き難くてしょうがない。
だから大抵は胡座を組んだ俺の膝の上に座らせて下から突いてやった。
これなら後ろからしても泣きはしないが鳴こうとしない。
向かい合ってすると安心しきったように高い声で鳴く。


「あっ、とし…としっ…や、にゃああぁっ」

「銀、」

「ね、おねがい……もっと、呼んで、おねがい…」

「銀、側にいるから」


だから、


だから泣くなよ。


安心させようと笑うが上手く笑えない。

痛いな。

俺もお前も。

泣くなよ。
捨てねぇから。
ずっと側にいてやるから。
いくらでも名前呼んでやるから。


「…銀」

「ふゃぁ、だめ…イっちゃ…」

「銀、」

「とし、好き…好きなの…とし、としっ」

「あぁ、俺も…」

「に、やぁっあっ…」


射精後の余韻に震える身体をきつく抱き締める。


「…とし、好き…捨てないで……」


あぁ、わかってる。
捨てる訳ないだろ。
ずっと側にいるから。

だから、

捨てないで、なんて言うなよ。

泣くな、泣くな、
お前が泣くと俺まで泣きそうになる。
俺はお前の側にいる。
ずっとだ。
だから泣く必要はないだろ?

涙で濡れた頬に手の平を当てる。
俺の手は震えていた。
怖いんだ。
お前を無くすのが。
お前が俺の側からいなくなるのが。
どこにも行くな。
俺の手の届く場所にいろ。


もう一度抱き締めたらそのまま消えてしまいそうで、


「銀っ…」


俺はただ名前を呼ぶ事しか出来ずにいた。


痛いな。

俺もお前も。


お前は捨てられる事に怯えて、俺の言葉を信じる事が出来ない。

俺はお前を壊してしまいそうで不器用な愛しか与えてやれない。

お前の傷を癒してやれない。

お前を安心させる事ができない。


お前を、




上手く愛してやれない。






あぁ、それでも俺は確かにお前の事を、








嘘みたいに愛してた。









2008.10.07


幸せだった頃。




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