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04 キミはボクの手の届く距離に、




――手術まで残り5日。



















「ひじかたー」


ソファーに座りテレビを見ていると銀時がニコニコしながらテレビを遮るように俺の膝に向かい合わせに座ってきた。
痩せている銀時が膝に座っても重くない。
俺の肩に両手を置いて今にもキスできそうなギリギリまで顔を近付けて、


「一緒にお風呂入ろ?」


とかわいらしく小首を傾げた。
風呂ねぇ……。

「かまわねぇけど」

犬のときも何度か一緒に風呂入ってるし。
やったぁ!と手を叩きじゃあ早くと手を引っ張られ風呂場に連れて行かれる。
待て待て、そんなに慌てるなよ。
テレビ消すから、それにお前鍋に火ぃつけっぱじゃねぇかよ。

たく、お前のおかげで俺はニンゲンの生活にすっかり慣れたよ。








服を脱いで先に風呂場に入ると後ろから待ってという声が聞こえた。
どうしたんだよ、と振り返る。
まだ服を脱いでいない銀時は顔を赤くしていて、服を脱ぐのを躊躇っていた。

「早く服脱げよ」

じゃねぇと風呂に入れないだろ?

「だって、やっぱり…なんか…」

モタモタしてる銀時を横抱きに抱えると慌ててしがみついてくる。

「ひ、ひじかたっ」

服を着たままの銀時をそのまま風呂の中へ。

「ふ、服が濡れ」
「どうせ洗うからいいじゃねぇか」

ちゃぷん、と風呂に浸かる。
ゆっくり息を吐いてくつろぐと恐る恐る銀時が身体を離して動きにくそうに体勢を変えた。
俺の足を跨がり向かいあう。

「強引…」

服が濡れて肌に張り付いて白いシャツが透けて肌色に染まる。

「一緒に風呂入るって言ったのはお前だろ?」

ニヤリッと笑ってやればぷぅと頬を膨らませた。
拗ねた顔も可愛いな。

「服重たいから脱ぐ」
「どうぞ」

ぷちぷちとボタンを外し前を広げると上気した肌が目の前に現れ瞳を奪われる。
銀時は肌が白いから染まりやすいな。
風呂の中で全てを脱ぎ終わると水を吸い重たくなった服を浴槽の外に落とした。
裸になり直接肌と肌が密着する。
甘えるように擦り寄ってくる銀時の髪を撫でてやれば泣きそうな顔をして俺の首に腕を回す。


「銀時…、なに腰揺らしてんだよ」


気がつけば細い腰を揺らめかせ勃ち上がった性器を俺の腹に擦りつけている銀時がいた。

目元を潤ませ銀時が俺の唇をゆっくりと啄む。


「ひじかたぁ…、……ひじかたの、コレ…お尻に挿れて?」


銀時の細い腰に当てていた手を交差させ強く抱きしめる。
戸惑う銀時。
以前の俺はニンゲンの姿でお前を抱きたいと思っていた。
でも今は、


「ダメだ」
「なんで……?」


また泣きそうな顔。


「もうすぐ手術だろ?」


高杉にも手術前に身体に負担のかかることはするなと遠回しにセックスをするなと止められている。


「やだ、おねがいっ、抱いてよ」


自ら尻に俺の性器を擦りつける銀時をなだめるように強く、強く抱きしめた。
ダメだ。
我慢しろよ。
俺だって我慢してんだ。
お前を抱きたくて仕方ねぇんだ。
でもな、俺はお前の手術が終わったらいなくなる。
最後にお前を抱けば俺はお前を忘れることが出来なくなる。
ニンゲンのこの腕でお前を抱きしめることの出来る喜びを覚えた俺は、ニンゲンの身体でお前を抱くことを覚えればきっとお前から離れることが出来なくなる。
怖ぇんだよ。
恐ろしいんだよ。
この身体でお前を抱けば俺は……。

もう俺じゃなくなってしまう。

土方十四郎になっちまう。

怖ぇんだよ。
頼む、頼むから、
俺を、




「……ひじかた?」




幼い子供のように駄々をこねていた銀時が俺の頬に指を当て流れる滴を辿った。


「泣いてるの?」


それには答えずに銀時を抱きしめる。
華奢な身体。
俺の腕に余るくらい細く、簡単に壊れてしまいそうな。


「なんで…泣くの?」


泣き出してしまいそうな声が耳元を掠めた。


「ふっ……、やだ…やだよぉ……」


堪えきれずに泣き出してしまった銀時。
ゴメン、
ゴメンな。

俺なんかでゴメン。

土方十四郎じゃなくて、


ゴメン。





唇を震わせ声を惜しむことなく泣きつづける銀時をただ抱きしめることしかできないなんて、


こんなことならニンゲンのこの腕なんか欲しくなかった。


抱きしめることが出来ればいい。

抱きしめることしか出来ない。



無力にも等しいこの腕が、


今の俺なのだ。








2009.09.07

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