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01 I shine for such a thing.
―そんな事わかってる






俺はただ怯えて泣いて主人の帰りを待つ。

いつからこんなふうになった?

聞き慣れた車のエンジン音にびくついて必死で自分の身体を抱き締めた。

誰もいない部屋の隅に頭から毛布を被って、

ぎゅっと瞳を閉じれば追い出された滴はポロポロと頬を伝う。

怖い、怖い、

近付いて来る。


玄関の開く音、

廊下を歩く音、

襖の開く音、


バクンバクンと壊れるぐらい心臓が早鐘を打って、





「銀時、今帰ったぞ」





ビクンと身体が跳ねて俺はゆっくりと瞳を開けた。
















01_I shine for such a thing.
 (そんな事わかってる)
















「…にゃぁ……」


カタカタと震えながら小さく鳴いた。

言葉をしゃべってはいけない。

俺は猫だから、鳴かなくてはならない。


「なんだその面は…」


ミシッと畳が軋み御主人様は俺に向かって歩み寄る。


「主人が帰って来たんだからもちっと嬉しそうにしやがれっ」

「にゃあぁっ!」


頭の上の耳を引っ張られ腹を蹴られた。

やだ、

痛い、

ごめんなさい。


ごめんなさい、ごめんなさいとにゃあにゃあ鳴きながら涙を零す。

御主人様は笑いながら俺を殴る。


御主人様、御主人様っ、トシっ!

痛いよ、もう止めて、耳が千切れちゃう、

逆らってはいけない。
抵抗してもいけない。
ただ従う。
ただ殴られる。

痛みだけが広がる。

大好きな御主人様。

大好きだった御主人様。


優しい御主人様。

優しかった御主人様。


好きって、
大事にするって、
いっぱい可愛がってやるって、

愛してるって、


言ってくれたのは嘘だったのっ?



御主人様っ、

痛いよ、

痛いよ、

胸の真ん中がすごく痛い。


優しく頭を撫でてくれた手は握り拳を作り俺を殴る。
振り上げられる腕が唸りを上げて俺のこめかみを打つ。


「……っ!」


視界が一転、真っ白になり鈍い痛みだけが広がった。

トシ…。

なんで、

なんで、痛いことするの?

俺なんか悪いことした?

畳の上に倒れた俺の着物を剥いで御主人様は痣だらけの俺の身体を露にした。

赤い鬱血が所々にあって火傷の跡もある。
御主人様に煙草を押し付けられたからだ。


「汚ねぇ身体だな」






ズキンと胸が痛む。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

こんな俺で、

ごめんなさい…。


「……ふ」


泣き声を堪える。

御主人様は汚い俺の身体を俯せにして慣らしてもいない俺のソコに御主人様のを突っ込んだ。

俺は畳に爪を立てない様、手をグーにする。


大丈夫、

怖くない、

大丈夫、

大丈夫、


そう言い聞かせなければ壊れてしまう。


唇を噛み締めて御主人様の揺さぶりに堪えた。


堪えて、堪えて、


そしたら、俺のこと愛してくれる?


優しく銀って呼んで頭撫でてくれる?


意識が朦朧としてくると背中に焼けるような痛みが襲った。


「にゃぁっ……!!」


御主人様が俺の背中に煙草を押し付けたんだ。

熱い、痛い、

皮膚の焼ける匂い。

堪えて、堪えて、

大丈夫だから、

怖くないから、




だって俺は知ってる。


御主人様は本当は優しい人だって、

仕事で忙しくてまともに休む時間がないことや、

御主人様の大切な人がこの間死んじゃったことや、

色々溜め込んでることや、


俺にこんな事するのは、
御主人様が壊れない為だって事も、ちゃんと知ってるから。




いいよ、俺は捌け口で。


好きにしていいよ。



俺は優しかった御主人様を知ってるから。

それさえ忘れずにいれば俺は堪えられるから。


だからいいよ。



大丈夫。



御主人様が壊れない様、


俺が壊れてあげる。




俺を殴って赤くなった御主人の指をペロペロて舐めると、御主人様はまた俺を殴った。


いいよ。

大丈夫。



御主人様がもう俺の事好きじゃないことくらい、






そんな事わかってる。








だから、いいよ。


好きにしてよ。




俺を壊して御主人様を忘れさせて………。









2008.10.01


設定は江戸の町と真撰組はそのままで銀ちゃんは猫です。




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