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バージンソイルにまず一歩
┗刈乃スガタ様/相互






バージンソイルにまず一歩。





基本的に銀時は面倒くさがり屋、だ。

それは誰もが知っていることで教師ですら既に諦めに達し、銀時に何かを頼むということはしなかった。

ところが、それを良しとはしないのが土方だった。

同じクラスになること3年連続。

風紀委員にも属している土方は3年間銀時の行動に文句をつけ続けていた。

別段小姑のような真似をするのが土方の趣味ではない。

出来れば土方は静かに過ごし関わりたくない、というのが本音だ。

けれども、どうしても眼についてしまうのだ。

だらしなさそうにしている銀時や、面倒くさいからと言ってクラス行事に参加しない銀時、窮屈だからと言ってセーラーのリボンをゆるく結んでいる銀時、楽だからと言って短いスカートで膝を立てて座る銀時、思い返すだけでこんなにもいっぱいある。

ともかく、土方にはその眼に付く銀時の全てが気に食わなかった。

だからといって。


「ひーじかーたくーん、これどーする気?」
「………知るか」

薄暗い体育倉庫の中でふたりっきりになるまでの説明にそれらがなるのだろうか。







話せば長いものになる。

「おい、坂田」
「んー?なにー」
「お前この前も体育サボったんだってな」
「げ。何で知ってんの?のぞき?ストーカー?変態?誰か警察よんでー」
「っ…何でこういう時だけよくしゃべるんだよてめぇは…!」
「んで、それがどーしたの?」
「服部がサボった分体育倉庫の整頓しとけ、だとよ」
「はあ!?」
「んで、俺が見張り」
「ふざけんな!」
「単位マジで落とすぞ」
「………」

30分後。

「あれ?土方、扉閉めた?」
「あ?閉めてねぇよ」
「いや、だって、閉まってるよ?」
「はぁ…?…って鍵も閉まってるじゃねぇかよ!!」
「うそぉっ!?」


以上。

あまり長いものにはならなかったが、事のあらましはこんな所だ。


土方は冷静に頭の中で今までの経緯を考え、更にため息を吐いた。


「ちょっとーため息吐きたいのは銀さんの方なんだけど?」
「うっせぇ、…多分教師の誰かが間違えて閉めたんだろ。服部も気付いて鍵開けてくれるだろうし、それまで待つぞ」
「はーいはい。…今日は見たいテレビあったのに」
「俺だって予定があったんだよ、ってゆーかお前スカートで胡坐かくな!」


幾分整頓された体育倉庫のマットの上で平気で胡坐をかく銀時に土方は声を荒げる。

それをうっとおしそうに手を振り、銀時はいつもどおりの答えを返す。


「いーじゃん、こっちの方が楽なんだから」
「お前は女だってこと理解してんのか!?」
「銀さんが男に見えんの?」


言われてつい土方の視線が銀時の身体を這う。

白い首筋から綺麗に薄く見える鎖骨、それらを隠すようにセーラーの生地が邪魔をして、けれども布越しでもわかる豊満な胸。

以前女子の塊で話していた会話が耳に届いたが、銀時はFカップらしい。

神楽が柔らかいし揉み心地も満点ネ!と男子の居心地が悪くなることを声高らかに叫んでいた、

胡坐をかいている膝から奥はスカートがギリギリ邪魔をしてよく見えないが、やはり白い肌で、膝枕にしたらさぞかし気持ちが良いだろう。


「…土方くん、無言で見下ろすのやめてくんない?」
「!」


食い入るように見ていた自身に気付き、土方は視線を離した。

学ランを脱ぎ、それを銀時に投げつける。


「…なに?」
「せめて膝にそれ乗せとけ」
「……土方って意外にフェミニスト?」
「そんなんじゃねぇよ」


秋口に入り、日が暮れるのも早くなっていた。

ただでさえ窓が小さく日の入り具合が少ない倉庫内は暗く、互いの距離が何とか見えるほどだ。


土方は扉以外の唯一外に通じている窓を見てみるが、そこからの脱出はまず不可能だと再確認する。

窓の高さや大きさ以前に、鉄格子がしてあるのだ。

あんな所から脱出するのはタネをしこんだマジシャンでもない限りまず無理だ。


「坂田、お前携帯とか持ってきてねぇの」
「教室に置きっぱなし、土方は?」
「俺も」
「役立たねぇの」
「お前が言うな。…教室に荷物置いてるんだし、気付くだろ」


扉に背を預けていて立っていた土方だが、立ち続けるのもしんどくなりその場に座った。

体育倉庫の床は冷たく、尻が一気に冷えていくがそれも我慢した。

他に座る所は銀時の横のマットくらいしかない。

それはそれで何となく気まずい、気がしたからだ。

尻の冷え具合も困るが、だからといってわざわざ跳び箱やボール籠に腰をかけるのは銀時の横に座らないようにしている、と言っているようなものだ。

それは更に気まずい。

きっと銀時がそれに気付けば、

「え、なに、土方くんってば銀さんのこと意識しちゃってんのー?ぷぷー青いねーっていうか銀さんの魅力にめろめろ?ぷっぷー!」

と、腹が立つ笑顔で言うに決まっている。


「今何時かな」
「6時くらいじゃねぇか?」
「…本当に誰か気付いてくれるかな」
「…気付くだろ」


シン、とした倉庫。

倉庫だけではない、扉の外の体育館も、窓の外の裏庭も。

きっと校内が静かで、人の姿はいない。


「……ね、」
「…なんだ」


土方の詰襟をぎゅうと握り、体育座りに足を変えた銀時が小さく声をかけてきた。

普段の面倒そうな声でも、人をからかう時のものでもない銀時の声に土方は返事を少しだけ遅れる。


「もし、誰も気付かなかったらどーする?」
「…朝までここにいることになるな」
「土方ん家の人は?」
「親父もお袋も仕事だ。今日は帰ってこねぇはずだからな」


医者である土方の両親。

忙しい両親に文句はないが、こういう時は少しだけ小言を洩らしたくなる。


「お前ん家はどうなんだよ」
「んー…オレ一人暮らしだから」
「…そうなのか?」


意外だった。

面倒くさがり屋の銀時が一人暮らしを出来るとは思えない。

料理も洗濯、家事そのものを面倒くさがってしなさそうな銀時、なのに。


「家庭のじじょー、でね」
「…ふぅん」


込み入って良いことではない。

そう思い、土方はそれ以上何も聞かなかった。

まだ、立ち入っていいところでは、ない。


「……まだって何だ、まだって」
「は?」


セルフつっこみをしている土方に、銀時が首をかしげる。


「ねぇ、土方くんそんな所座って寒くないの?」
「あ?」


益々暗くなった倉庫内で銀時の影が動いている。

多分手招きをしているのだろう。


「こっち座れば?マットの上のがマシだし」
「…………」


尻の冷え具合は無視出来ないほどになってきている。

我慢出来ない程ではないが、その内我慢の限界は訪れる。

あとどれくらいで教師が気付いて鍵を開けてくれるのかはわからな
い。


「………」


土方は無言で腰を上げ、一人分の距離を開け、銀時の横に座った。

それと同時に足に置かれる土方の詰襟。


「ありがと、寒かったでしょ?」


…これは、誰だろう。

真剣に土方は思う。

土方の知っている銀時は決して礼を言う女ではない。

人に気を使う女ではない。

それなのに、これは、一体誰なんだ。

「…いい、お前が持っとけ」
「え、でも土方シャツだけだと寒いんじゃないの?」
「お前の足を見てる方が寒いんだよ」
「…すけべ」
「ぶはっ…!!」


思わず噴出す。

教室で冗談交じりに言われても平気だった言葉に、なぜ今本気で焦ってしまうのか。

これでは本当に下心故にその足を見ていたようになってしまう。

いや、正直下心がなかったとは言いがたいが。


「…いいからそれ着とけ」
「ん、…何かビックリだよね」
「何がだ」
「土方の印象が変わった」


それは下心に気付かれたということだろうか。


「……い、いや、俺は、っつーか、ンな風に出されてたら誰だって見るだろ!?」
「は?何の話?」
「…え、」
「土方が優しいね、って話なんだけど」
「………そーですか」


ほっと肩をおろし、胡坐をかいた膝の上に頭を落とした。

半分自爆しかけた自身に沢山のツッコミを入れたい所だが、土方はとりあえず話を続け逸らすようにした。


「てゆーか、お前もそうだろ」
「オレ?」
「お前が謝るのってさっき初めて聞いたぞ」
「そうかな」
「そうだよ」


真っ暗な倉庫で銀時の顔は見えないが、くすくすと笑う声は聞こえた。

静まり返った場所で聞こえるその声は、柔らかく土方の耳に届く。


「だって土方ってばいっつもムカつく態度だし」
「ありゃお前が悪いんだろ」
「土方が怒ったような態度でくるからオレもからかうしかないの」
「なんだそりゃ」


呆れたように返せば、再び聞こえる柔らかい小さな笑い声。

日も暮れたのだろう、真っ暗い倉庫ではその声だけが銀時の存在を示すもので。

急に不安にかられた土方は腕を伸ばし、銀時の髪を手探った。


「…っ」
「お、いた」


指先と掌に感じるふわふわの髪。

くるりと人差し指に絡めると素直に髪は絡んで、土方はその感覚を何度も楽しんだ。


「なに、してんの」
「…そっち寄っていいか?」
「……」


返事を待たず、一人分の距離を詰める。

真横に感じる銀時の体温に、土方は安心する。

暗い場所があまり好きではない、けれど、この安心感はそれだけではない気がする。


「…せんせー遅いね」
「そうだな」


独り言のような呟き声に、土方も呟いて返す。

片手で弄っていた銀時の髪から指を離し、そのまま下におろす。

狙ったのか自然だったのか銀時の肩を抱く形になり、一瞬だけ悩んでから土方は銀時の肩を引き寄せた。


「……そーゆうのがモテる秘訣?」
「なんでだよ」


どうしてか冷静になった土方の頭の中は、銀時の言葉を一言一言大切に聞き入った。


「土方って人気あるじゃん。オレが土方に色々言われるのを羨ましがってる子多いんだよ?」
「わけわかんねぇし」
「モテてるのはいい事だと思うけど」
「…好きな女がいたら面倒なだけだろ」


面倒、というのは銀時の専売特許だったはず。


「いるの?」
「あー…よくわかんねぇ」
「なにそれ」


ぎゅう、と銀時の肩を抱く手が強まり、土方は息を吐く。


「…お前はどうなんだよ」
「どうって、」
「好きなヤツいねぇの?」
「……何で土方と恋バナになってんの?」
「いいだろ、」
「……よくわかんない」
「お前もかよ」


頭を寄せ合って、笑う。

窓から見える外は、倉庫内と変わらない。

真っ暗な外。

結局誰も気付かずに帰ってしまったのだろう。

広い校内の狭い体育倉庫でふたりっきり。

きっと、朝まで。


「ね、」
「…ん?」
「土方って煙草吸うの?」
「……何でわかった」
「ちょっとだけ煙草の匂いがする」


首筋に銀時の鼻が押し付けられる。

唇の動く感触に背筋が震えた。


「風紀委員がマズいんじゃない?」
「…バレなきゃいいんだよ」
「ふりょー風紀」
「うるせぇ」


バレたのなら、いいか。と土方はポケットに入れていた煙草とライターを取り出した。

取り出すために銀時の肩から手を離す。

暖かい体温が離れたせいか、一気に冷えたような気がした。


安っぽい100円ライターを指先の感触で上下を確かめ、火を付ける。

朝までどうせ誰も来ないのだ。

煙草の一本くらい平気だろう。

真っ暗な中に生まれた灯りに、久々に見た気がする互いの顔に、ひどく落ち着く。


銀時もちょうど土方を見ていたのか、視線が合う。

むずがゆい、でも、決して悪くない空気。


「なあ、坂田」
「…なに?」


煙草を指でひとつ摘んだまま、土方は銀時に顔を寄せた。


「お前さ、好きなヤツいねぇんだろ」
「いないとは言ってないんだけど」
「俺でどうだ」


土方自身でも急だと思う告白に、銀時は眉を寄せて笑った。


「なに、それ」
「つり橋効果ってヤツ?」
「つり橋効果って…いつもと違う状況に置かれたふたりが恋と勘違いするっていうあれ?」
「それ」
「勘違いなら駄目じゃん」


付けっぱなしにしていたライターが熱を持ち、親指にその熱さが伝わり、指を離す。

当然火は消えて、真っ暗な倉庫に逆戻りした。


更に顔を寄せ、ちゅっと、頬にキスをした。

…つもりだったが、視界がきかないせいで別の場所に唇を落としたようだった。

感触で土方はそれを理解するが、場所はわからない。


「お、おま…」
「勘違いでもいいんじゃね?」
「……」
「っつーか、まぁ、俺は元々お前のこと嫌いじゃなかったし」
「……」
「お前とこうするのも嫌っていうよりむしろもっとしたいし」
「……」
「っていうか、あれ?俺お前のこと結構好きだったのかもしんねぇわ」
「…もう、なにそれ…」


困惑混じり、呆れ混じり、照れ混じり。

そんな銀時の声を聞き、土方は指先の煙草を投げ捨て、両腕を銀時を抱き寄せた。


「勘違いしろよ、なぁ?」
「…土方くんホント教室とキャラ違い過ぎるんだけど」
「俺もビックリ」
「…もーちょいヘタレと思ってたのに」
「…実際は心臓バクバクなんだけど、俺」


ほら、といって銀時の手を胸に当てさせる。

銀時の腕を掴んだ時に小さく震えたのが、土方に伝わり、口元が緩む。


「…勘違いしそうか?」
「…しそう、ってゆーか、もう、…した」


銀時の腕が土方の首に伸びて、弱い力で抱きついてくる。

それの何倍もの力で土方は銀時を抱きしめ、マットの上に押し倒す



「ちょ、おま、何すんの…!」
「何もしねぇよ、何の準備もしてねぇし」
「準備って……も、お前本当キャラ違い過ぎだ!」
「お前もな。面倒くさがり屋はどこいったんだよ、すげぇ可愛くなっちまって」
「……誰かこいつの口塞いで…」
「キスしたいのか?」
「っちがうし!!」


真っ暗な視界。

硬いマットの上で銀時を覆うように両腕を顔の横に置く。

見えない。

けれどわかる。

困ったように眉を寄せ、喜色に染めた銀時の顔。


「…っあぁー、クソ…」
「な、なんだよ」
「…素股ならいいよな?」
「…っ!!?」


返事を待たず、土方は銀時の望んだ通りにまずは口を塞ぐ事に専念した。





苅乃さんより相互記念に頂きましたー!

土♀銀で体育館倉庫に朝まで閉じ込められた二人。

是非、土方が銀ちゃんの柔らかい太股でシコシコする様を見てみたi・・orz



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