[通常モード] [URL送信]
嫌いヨ、だけどあなたは優しく笑った
┗69696[神楽→土方に嫌悪]
神楽視点






そんなのわたしは知らない。知らない。知らない。知りたくなかった。だってそうでしょ。わたしの中の絶対を壊さないで。わたしの中のあの人を壊さないで。わたしから大事な家族を奪わないで。

わたしから銀ちゃんを奪わないで。


始めはなんでも良かった。ただ家に帰りたくなかった。パピーはいつも家にいない。お兄ちゃんは家を出ていった。ひとりでみんなの帰りを待つのは淋しいの。銀ちゃんはそんなわたしを側においてくれた。お兄ちゃんってこんな感じなのかな?初めて家族らしい家族が嬉しくて、我が儘を言って、だけど笑ってくれる。嬉しかった。嬉しかったの。銀ちゃん銀ちゃん。わたしね、ずっと銀ちゃんの側にいたい。新八や姐御やみんなとずっと一緒にいたい。



その日はとても暑くて、家を出てすぐにわたしは傘を忘れたことに気付いた。一緒に家を出た新八に傘を忘れたからと銀ちゃんのいる家に戻る。どこに置いたっけ?ああ、確かリビングのソファーの裏に立てかけたままだ。なんで忘れたんだろう。そうだ銀ちゃんが早く出掛けろよとせかすから。背中を押され玄関に押し出されて、だから傘を忘れたんだ。

傘を取ったら銀ちゃんに文句を言ってやろう。

そう思いながら玄関の扉を開ける。

すぐに異変に気付いた。

あれ、タバコの臭いがする。銀ちゃんタバコ吸わないのに。お客さん?だから早く出掛けろよと追い出したのかな。でも傘がなかったら日に焼けてしまう。太陽は暑くて嫌いヨ。

ぺたぺたと廊下を歩く。お客さんがいるのなら邪魔しちゃいけない。こっそり傘を取って出て行こう。

足音を立てないようにゆっくりと。

リビングまで来てこっそりと中を覗く。








―――――え?








ソファーに座る銀ちゃんに覆い被さる黒い影。誰?銀ちゃんと、キスしてる。


「ふ、ばか、しつけぇ」
「久しぶりなんだ、もうちょい我慢しろや」


またキスした。
銀ちゃんの後ろ頭を支えて黒い影は銀ちゃんをソファーに押し倒す。その時にちらりと黒い影と目が合った。あいつは、


わたしの顔を見て笑った。




それからわたしは走った。銀ちゃんのいる家を出て、傘も差さずに日の中を無我夢中で走った。
知らない、知らない、わたしは知らない。嬉しそうに笑う銀ちゃん。わたしといる時より嬉しそう。知らない、あんな銀ちゃん知らない。知りたくなかった。ジリジリと暑い。傘がなければ日が暑くて焼け死んでしまいそう。


どこまで走ったかわからない。わたしは日の当たる場所で膝を抱えてうずくまっていた。川岸の草の上。ジリジリと暑い。日に焼かれて肌が赤くなる。知らなかった。知りたくなかった。嬉しそうに笑う銀ちゃん。わたし達といるよりあの男と一緒がいいの?わたしは銀ちゃんの側にいない方がいい?

わたしはまたひとりぼっちになるの?

ジリジリと暑い。このまま日に焼かれて死んでしまいそう。銀ちゃん銀ちゃん。わたし銀ちゃんの側にいたいの。新八や姐御やみんなの側にいたいの。だけどいつか、みんなと別れなくちゃいけないの?嫌だ、みんなと一緒にいたい。わたしから銀ちゃんを取らないで。

ジワリ、と涙が浮かんだ。どうしよう銀ちゃん、銀ちゃん。銀ちゃんの顔が見れない。わたしと一緒にいても笑ってくれる?あの男といる時みたいに笑ってくれる?

やだ、考えたくない。涙が止まらなくて腕の中に顔を埋めた。すると、









ふわり、と頭に何かが触れた。









顔を上げると頭の上に黒い上着がかけられていて、わたしの隣にあの男が立っていた。


「何しに来たアルカ」
「別に、今日は暑いな」
「これはなんの真似ヨ」
「暑いだろ、被っとけ」
「嫌ヨ、マヨ臭い」
「肌赤くなってるじゃねぇか」
「わたし太陽嫌い、だからお前も嫌い」
「話繋がってねぇんたけど」


苦笑してタバコをくわえる。
黒い上着は暑い。たけど、

銀ちゃんの匂いがする。

また涙が出てきた。


「ほら」


目の前に差し出された手の平。パピーの手に似ている。あの時もこうやって迎えにきてくれた。


「なにヨ」


男を睨みつける。


「帰るぞ」


どこに?そう聞こうとしたら男は穏やかに笑った。銀ちゃんの笑顔と似てる。優しい笑み。


「帰る?」
「あぁ、一緒に」


怖ず怖ずと男の手を握る。わたしより大きな手。あたたかい。頭から被った上着のおかげでもう日に焼かれない。ジリジリと熱かった胸ももう痛くない。


「お前、パピーみたいネ」


呟くと男は苦笑して、


「じゃああいつはマミーだな」


って、わたしの頭をぐりぐりした。嫌じゃない。あ、また涙が出てきた。男の手の平をギュッと握って、わたしは銀ちゃんの待つ家まで、並んで歩いた。


知らない。わたしは知らなかった。
いつのまにか家族が増えていたこと。


ねぇ、わたしはまだ銀ちゃんの側にいていいの?


尋ねたら男はきっとこう言うだろう。


『お前が嫁に行くまではずって一緒だって』




だって銀ちゃんもそう言ってたもん。











2008.12.17

69696キリ番 nanna様へ

土方と銀時と情事をお子様らが目撃。
始めは土方に嫌悪するも……。

というリクエストでしたが、すみません。全っ然、リクエスト通りじゃないですね。土銀要素皆無だし。新八出てこないし。

すみません、アレでしたら書き直し致しますので(^-^;

リクエストありがとうございました(^O^)





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!