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愛の冒涜。(土金)









ピッ、と電子ロックの玄関を開ける音が聞こえると俺は吸いかけの煙草を灰皿に捩込んで立ち上がった。















「お前いい加減にしろよな」


呆れたような声を出す金時は苛立ちをあらわにため息をついた。

玄関に入ってきた金時に靴を脱ぐ暇さえ与えずにキスをした。
噛み付くように、ねっとりとした深いキスを。
最初は驚いていた金時も俺のキスに応え舌を絡ませる。
こいつはホストをしているからかキスが上手い。
それが俺の苛立ちを増幅させる。

その場で女の残り香がするスーツを脱がせ裸にして抱き上げた。

お前からお前以外の匂いがするのもムカつく。

ベッドに身体を落としさっき脱がせた金時のネクタイで手首を縛り上げた。

逃げないとわかっていても縛っておかなければ気が済まない。
出来るなら鎖に繋いでこの部屋に閉じ込めたかった。


「痛ぇんだけど」
「わざとだ」


跡が残るようにきつく縛り上げる。
俯せにベッドに押し付け背中に馬乗りになるとソレは嫌でも目に入った。

金時の雪のように白い肌。
うなじの窪み、ソコにある紅い跡。

こいつは気づいていない。






――ここにキスマークがあることを。







俺じゃないことは確か。
女でもない。
後ろにキスマークをつけるやつなんて男に決まってる。


苛々する。


いつまで経っても消えないキスマーク。
それはこいつがその男に頻繁に会っているという証拠。
俺とこいつとの爛れた仲に浮気だとかそういう言葉はない。
お互いホストをしている身だ。
女々しく問いただしたりするのがどれほどウザイかを知っているし、俺もお前も女を相手に身体を許すことだってある。
仕事だと割り切っている。
今更ここにキスマークをつけたのは誰だなんて聞けやしねぇ。


「重いんですけど、」
「黙れ」


紅く色つく華に爪を立てれば金時の身体が強張った。
ギリッと更に爪を食い込ませ赤い血を滲ませる。


文句は言わねぇ。
止めろとも言わねぇし、気付かせもしない。

ただ、





この苛々だけはどうにも治まらない。





「痛ッ……痛ぇよ馬鹿!」
「黙れっつってんだろうがッ」




ベッドが壊れるんじゃないかってくらい勢いよく拳を金時の顔のすぐ隣にめりこませた。
スプリングが軋み悲鳴を上げる。
苛々すんだよ。


このまま首を絞めて殺してやろうか。
それとも心臓にナイフを突き刺してえぐってやろうか。


いつまでたっても俺だけのモノにならない。
それは俺も同じ、お前だけの俺になれない。

舌打ちをすれば下にいる金時がクスクスと笑い出した。
この状況で笑うかよ。

金時は首を捻り顔だけをこちらに向けると、


「なぁ、いっつも強烈に愛してくれんのは嬉しいんだけどよ、たまには優しく愛してくんねぇ?」


そうニヤリと笑った。


俺はお前のそういうところがキライだ。




「上等だコラ。お前が死にたくなるくれぇ愛してやるよ」




俺達はそうやって愛することしか出来ないから、いつも死ぬ気で、殺すつもりでお互いを愛する。






2010.05.01


金ちゃんにキスマークつけてんのはぱっちゃんですよ(・∀・)



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