[携帯モード] [URL送信]
帰り道













銀ちゃんとお手々繋いで雨の中を歩く。
屯所に行くときはふたりで歌いながらだったのに、帰りは銀ちゃん歌ってくれない。
金ひとりで歌っても寂しいよ。

繋いだ手もなんだか震えていて、銀ちゃんは下を向いて顔を真っ赤にしていた。


「銀ちゃん大丈夫?」


そう聞いても銀ちゃんは大丈夫ってにぱっと笑う。
でもいつもの笑顔じゃないの。
金には言えないことなの?
なんだか寂しいよ。

行くときは楽しかったのに帰りは全然楽しくない。

合羽のフードの中でお耳がペタンとなって尻尾も元気がないみたい。

たぶん金も今銀ちゃんとおんなじなんだろうな。

強くなった雨が合羽を弾く。
ビシビシ当たって痛いくらい。
トシが急ぐぞって急かすけど銀ちゃんが歩きにくそうによろよろ歩くから急げないよ。


トシが振り返って、いじわるな顔をした。




「にゃぁあッ!!」

「銀ちゃん!?」





隣にいた銀ちゃんの耳がピンっと立ったかと思ったら高い声で鳴いて雨の中こけちゃった。
銀ちゃんが手を離したから金はこけなかったけど、こけちゃった銀ちゃんはビショビショ。
フードも取れていっぱい濡れて、急いで銀ちゃんにフードを被せてあげて大丈夫?って聞いてみたけど今度は笑ってくれない。


「ふぇ…やだよぉ…、もっ、やだぁ…」


と泣き出しちゃった銀ちゃん。
トシに拾われた頃銀ちゃんは泣き虫だった。
怖くないよって言って頭を撫でてくれるトシの手にビクビクして今みたいによく泣いてた。


「銀ちゃん、泣かないで…」


金まで悲しくなっちゃうよ。
わんわん声をあげて泣く銀ちゃんに堪え切れず金も泣きそうになったとき、

ポン、と金の頭をトシが撫でた。


「銀、ホラおいで」


トシが手を伸ばすと銀ちゃんもトシに手を伸ばす。
合羽を着たままの銀ちゃんを抱き上げてトシは銀ちゃんの背中を優しく摩った。


「とし…としぃ……」
「少しやりすぎたな」


銀ちゃんを抱っこしたまま肩に傘を置いて濡れないようにしても、銀ちゃんを抱っこしてるからじわじわとトシのお洋服が濡れていく。


「トシぃ、銀ちゃん大丈夫?」


銀ちゃんね、泣いてたよ。
大丈夫だよ、ってトシが微笑む。
トシが大丈夫って言うなら大丈夫だよね。

銀ちゃんを抱っこしたまま歩き出すトシの上着の裾を握ってトシの隣を歩いた。

ぐすんぐすんと鼻を鳴らす銀ちゃんのしっぽがそっと金の腕に絡まった。








2009.09.16

[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!