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ふわふわしてる。
目覚めてからの数分間はふわふわしてる。未だに現実と夢の世界の合間を漂っている感じで、ふわふわと脳みそが浮遊している感じ。絶妙なバランスで保たれた理性がフと気を抜いた瞬間に再び夢の中へと誘われてしまう。
つまる所、黒崎一護は滅法朝には弱かった。
一護さん!起きて起きて!朝っスからね!
見た目とはウラハラに多少は朝に慣れている浦原はベッド横に腰掛けながらシャツのボタンを閉める。慌しい朝の風景。馴染んだ天井に馴染んだ窓のカーテンの色。そして馴染んだ彼の香りと香水とキャンドルの仄かな甘さが鼻腔をくすぶっていよいよ一護の意識をはっきりと浮上させようとしていた。
フワリ、香るシャンプーの匂い。

「一護さん!おーきーてー!遅刻しちゃいますよ?」

くるりと振り返った浦原の、揺れた髪の毛から漂う仄かな香りが再びふわりとした浮遊感を一護へと与えてしまうから、一護の琥珀色はトロリと蕩けだす。
ああ…ヤベ…ちょー気持ちイイ…。
ウトウトとし始めた一護を冷めた瞳で見ながら浦原は情けの欠片もなく額へとデコピン。

「……ちょー痛い……」
「っ、…あ、アタシの指の方が重症のような気が……」

ビシ!と大袈裟な音が鳴ったのにも関わらず石頭の一護はそろりと両手を動かして額を押さえるだけ。反して浦原はジンジンと痛みだした指を抑えながら前かがみんになる。フィフティー・フィフティーとは言い難い勝敗は痛みだけを両者に与えて終了する。
ふと、目に留まった彼の項。
朝はいつだって後ろにひと括りにされる長い金髪がゆらりと揺れては襟の隙間から項を見せつけた。
"あ…うまそう…"
未だまどろみの中で漂う一護の思考がゆらり揺れては体を起して浦原の背中へのそりと乗っかる。
暖かい子供体温が背中を包んで、目覚めたばかりの浦原の睡魔を引き寄せた。
とろり、金色が僅かに蕩ける。

「がぶっ」
「いっ!、た!馬鹿!一護さん!」
「あう、は…うま…」
「朝食じゃないからアタシ!ちょ、こら!噛むのやめなさい!!!」

一瞬のまどろみが次の瞬間には吹き飛んでこっぱ微塵になって床下へと転がり落ちた。首筋に走った激痛、容赦なく噛まれたであろうそこを押さえようにも子供が全体重をかけてマウントを取るから振り払う事も出来ない。
朝の黒崎はとても厄介。
未だにカジカジと人様の項を獣よろしく噛んでいる子供を力いっぱいに振り払ってベッドへと押し倒した大人は少なからず朝の知的な表情を壊して見下ろした。
ム、少しだけ膨れっ面の子供の頬をつねる。

「いひゃい」
「馬鹿っすか?アタシの方が痛いっス」
「ひゃっておなかすいた」
「朝食は準備出来てます。だから早く起きろって言ったでしょう」
「ひひゅは?」
「はあ?」

頬を抓られながら呂律の回っていない言葉を発する子供の瞳は未だ蕩けて甘い色彩を映し出している。これはまだ…起きてもないなあ…、浦原は頭をガシガシとかきながら冷めた金色で見下ろして、体を近づけては口付ける。
チュ、ちゅちゅ、ちゅちゅ。
軽く軽く、朝の理性が吹っ飛ばない程度には甘く小さく口付けた。

「は、もっと…」
「一護さん…起きてくださいよ…ほんっと…これ、あなたは覚えてないんだから…」

二回、痛い思いするのはお断りっス。
首に回された子供の腕を取り払い、そして拒む様に口付けながら言う。それは果たして卑怯だろうか?とも自問自答してみるが、浦原の言葉なんてお構いなしな子供を見ていると溜息を吐いてしまいそうになった。
チラリと横目で見るデジタル時計の数字は7と4と1。

「……あーもう…ちくしょう。あなたがいけないんですからね?」

あと1時間は余裕があった。
二人で食べる朝食は子供の口に合わせて和食。全て平らげたら二人でお約束のモーニングコーヒーを飲もう。子供のにはミルクをたっぷり注いだカフェオレを。そうして二人で玄関先で行ってらっしゃいのハグとキスを交わし、月曜の気だるい朝をスタートさせよう。
全部計画が狂ってしまったが仕方ない。

「ま、惚れたもん負けって昔から言うんスもんね」

誰に言い訳するでもなく楽しそうに言いながらキスを再開させた。
打って変わった夜専用のキスは再び夢の中へと子供を引き摺り込む。








kiss me,hug me,&xxx




あきゅろす。
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