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初めて、彼の部屋ではない場所で夜を過ごした。15年間過ごし慣れた自室。見慣れた天井の色、ガーネッシュNo.8の香り、煙草の香りがしない自室で、スプリングの唸りに一々ドキドキしながら抱かれた。
真夜中に訪問してくるのは彼の専売特許で、音も無く鍵を開け(どうやって開けてるのかは知らない)悠々と入り込んでくる。いつもなら追い返す振りをして、数十分共に過ごすだけで帰って行くのに、何故か昨日だけは違った。二人が違った。二人を纏う夜の風が違った。
ふわりと香る麝香の匂いに混じって彼から香ったのは似合わないシャンプーの香り。それがなんだかやけに甘ったるく感じて、一護の体は自然と浦原へ寄り添う形で膝に跨っていた。どうしたの?今日は、だなんて意地悪く笑む唇に吸い寄せられる様に口付けたらもう歯止めが効かなかった。どちらもソレは同じで。未だ階下では家族がテレビを見て団欒していると言う時刻なのにも関わらず、一護は浦原の首へ腕を回し、必死で声を抑えていた。
ちょっと我慢して、忙しない息を整える事を忘れた浦原の熱い吐息が耳に触れる度、ダメだと漏らした。どうした事か、普段ならこんな場所でこんな時間にこんな気持ちになる事なんて無かったのに。いつもならあの場所、彼のテリトリーでもあるあの部屋でしか事に及ばないのに。自室だと言う事と、まだ家族も街も寝静まらない時間帯で夜を共有している事実に酷く興奮した。
自身を組み敷く彼の後ろにいつもの見慣れた天井がある。
場所が違うと言うだけで違って見える彼の表情。
伝う汗の熱さに交える熱の切なさ。
互いに声を抑えて、スプリングが唸る度にドキリと心臓を高鳴らせた。
バレてしまわないか、妹が入ってこないか、夜に覗き込まれてしまわないか。声が漏れてしまわないか。色んな所で危惧してしまって集中出来なかった行為の始めに浦原が優しく、けれど少しだけ咎める様に意地悪な愛撫を施したから一人きりでは無いのだと胸の内が震えた。
二人で共犯になる。二人でこの夜を共有している。なんだか秘密を共有しているみたいでいつも以上に興奮した一護の口元からははしたない言葉がどんどん湧き出て浦原の熱をいっそう上昇させた。
いつ耳にしても彼の甘い声は心臓に毒だと浦原は思う。普段の彼からは想像も出来ない痴態に心臓が爆ぜてしまいそうだとも思う。もっと乱れていいよ、秘密の話しをするみたいに耳元で囁けば"じゃあもっと激しくして良いよ"と逆にこちらのペースを乱された。一体どこでそんな言葉習ってきたの?少しだけ不安になる。
階下に居る筈の彼にバレまいと結界を張ったは良いが、きっと彼は気付いてるに違いない。結界を張る前、殺意に近い霊圧を受けたから。それでもこうして黙認してくれるだけでありがたい。
"だってねえ、据え膳喰わぬはなんとかって言うじゃない一心さん"
彼が耳にしたら静かに怒るであろう言葉を自身の内側でだけ吐き出して浦原は荒々しいキスを子供に贈り付けた。鼻で甘く鳴く子供は浦原のキスにも施される愛撫にも交わる熱の切なさにも漸く慣れてきたみたいで、それが途方もなく嬉しい。
そう感じてしまうくらいにはこの子供にご執心らしい。
ダメ、ダメ、イっちゃう。理性が飛ぼうとも声を必死で耐えながら耳元でないた子供は言葉の後でびくびくと体を震わせて熱を吐き出した。締め付けられた快楽に続いて浦原も中で吐き出せばその熱さに驚いてひくりとまた泣いた子供が壊したいくらいに愛しい。
厄介だなあ、大事にしたいのに壊したい衝動に襲われる。
苦笑しながら、子供の手を握る代わりにシーツを握り締めて精を全て吐き出した。
うっかり、この子の手首をもいでしまいそうで怖かったからだ。
ハア、互いに乱れた息を整えながら小さくキスを繰り返す。まるで酸素を分け与えてるみたいな行為に二人して笑った。気持ち良かったですか?と意地悪く聞けば、恥かしそうに"癖になっちまいそうで怖い"と凡そ子供らしからぬ言葉を吐き出した一護を見てヤバイなと思った。
また熱が込み上げてしまいそう、こっそり囁けば、バカかと優しく笑われた。
二人にとっては初めての夜。
初めて、秘密を共有した夜でもあった。













秘密の夜を共有する




あきゅろす。
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