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くすぐったがりな彼はデザイン転写する際にもふへへとくすぐったがり、転写位置がずれたりするから厄介で、いざ筋彫りをしようと針を刺しても部分部分によってはくすぐったがる。
それでも、骨に痛みが走り神経を逆撫ですればビクリと動いて小さなうめき声を上げる。吐息混じりの噛み締めた声が耳に悪い。
ヴィイインン。唸ったマシーンが転写したラインを綺麗に辿って真新しい傷痕を故意に刻んでいく。室内には彼のリクエストでロックサウンドが流れるが、浦原の耳にはマシーンの唸りと彼の吐息が響いて仕方無い。
今度はわき腹に入れたいんだ。
自身でデザインしてきた絵に浦原のオリジナルも加え、煙草ケース5つ分の大きさでマリア像は出来上がった。わき腹に彫りたいと言われた時には嫌な予感しか無かったが、案の定、彼は苦し気に唸っては笑い、唸っては笑いの繰り返しで浦原の集中力を根こそぎ奪い尽くす。
何とか筋彫りが完成した時には時間は既に夕刻へとさしかかっていた。
これから色入れとなると相当時間がかかりそうだ、施術中に着用していたマスクをずらして「一本吸う?」と聞く。
やや疲れきった表情で一護は頷いたのでサイドテーブルに置かれた煙草を取って、一本口に咥えながら火を点け一服してから一護の口元に持っていく。
浦原の指先から受け取った煙草を横向きの状態で吸いながら美味しそうに紫煙を吐き出す彼を見て、浦原も同じ煙草を吸い始めた。

「…クソ痛い…」

ぼそりと呟かれた言葉にククと笑ってしまう。

「そりゃあそうだ。ヘソ周りの次に痛い場所だからね。後は色入れだけだけど、どうします?」
「どうするって?」
「このまま続行する?ラインが出来上がってから色入れるのでも良いよ」
「…色入れの方が痛いか…」
「痛くないタトゥーってなに?」
「タトゥーシールかタトゥータイツだな」
「何それ、ジョーク?」

おえっ、吐き出す様に舌先を出してみせる浦原を見て笑った。笑ったが、じりりと熱を持って膨れた皮膚が痛むからアイタタタと紫煙を吐き出しながら唸る。
施術したばかりの傷は熱を持ち、血が滲み出て来ない様にワセリンを塗りつけている状態だから腕が引っ付かない様に気を払って横向きの状態で浦原を見上げた。

「痛いのに変わりはねーからな。耐えるよ」
「まあ大まかな部分が終われば後は時間かからないんで。ライン入れる時よりは時間は短いし、ただ…」
「ただ…?」

珍しく言いよどんだ浦原を見る。
横目で一護を見た金色が少しだけ困った感じで光り、視線を外しながら顎に手を置いて考える素振りをして見せた。

「…君のうめき声ね、アノ時の声そっくりで…」

意を決して言葉を紡いだ浦原を見て、きょとんと目を丸く開きその後でワハハ!と盛大に笑った。笑えば笑う程、引きつった皮膚が痛くてイタタと唸るがおかしさは更に増してヒイヒイ唸る羽目になった。

「おい、頼むぜ…施術中に勃起したらへし折るからな」

自分で発したジョークに腹を抱えて思いっきり笑いたい衝動に今は耐えて、バンバンと浦原の左腕を叩く事で発散させた。

「困ったなあ…折られちゃう」
「言っておくが、これ彫ったら一週間は出来ないからな」
「…なんでわき腹彫りたいなんて言い出したんだこの子…」

寝台に肘をついて頭を抱えながら唸り始めた浦原を見てフフと小さく笑う。
そりゃあお前、考えながら見たのは浦原のわき腹、黒のロングTシャツの下に隠されたイエスキリストのタトゥーを思い浮かべながら触れる。

「つがいが居なきゃかわいそうだろう?」
「…言っとくけどマリアさんはイエスさんの恋人じゃないっスからね」
「お前がイエス様彫りたいつっーから俺頑張ったんですけどー」

一年前に一護の手で入れた部分を乱暴に叩けば痛い痛いとうそ臭くも唸る。
一頻り笑い合った後、互いに深くニコチンを吸い込んで吐き出す。くゆる紫煙が消えたのを合図にキスして施術を再開した。














ピンナップガールが微笑む




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