67 彼女のお気に入りのバブルバーはショッキングピンクのスターが印象的で、尚且つ凄く形容のし難い甘い香りを振りまいてさらりとお湯に溶けてはピンク色に変色させた。初め見た時はどこぞのラブホテルだ、とうっかり口をついてしまうくらい驚異的だったのを憶えているが、慣れた今となってはバスルームを占領するこの甘ったるい香りにも一々驚かない。 魔法のステッキ!と言いながら変な鼻歌を歌って張った湯にくるくる回しながら溶かしていくネルの姿を見るのは微笑ましいではある。 「ネルさ、そろそろ1人で入れる様にしような」 ゆったり大の大人が二人入っても余裕がある湯船に浸かりながらフウっと息を吐く。伸ばした足の間に挟まって水鉄砲を作って遊んでいたネルはウ?と唇を尖らせて一護を見た。 「まだ入れませんっす!」 「…お前な、その返答は女子にあるまじき返答だからやめなさいとあれほど言っただろう?」 「なんか可愛いっすいちご」 「…なんだそれは」 「ダディの真似っこっす〜」 「尚更やめろ!」 「きゃー!不意打ちはルール違反っすよ〜」 反撃として水鉄砲を喰らわせたらきゃっきゃ面白がって両手をバタバタさせるから思いっきり顔面からお湯を被ってしまった。思いっきり吸い込んだ甘い香りにむせながら前髪を後ろに流し暴れるネルを両腕で拘束する。 「お行儀が悪いぜレディ、大人しくしない子にはこうだ!」 抱っこの容量から後ろ向きにさせて頭をガシリと掴みつむじに唇を押し当てて思いっきり吹いた。 ぶぶぶぶーっ!大袈裟になった音と首筋からざわざわする感覚にネルは笑って余計に暴れる。本来は一人でゆっくり浸かりたいバスタイムではあるが母親の都合で浦原に預けられる時だけはこうして一緒に入っている。最初は断固拒否したが一護には年下の妹達が居たので慣れるのに時間はかからなかった。建前として一人で入りなさいと言うが本心では一体いくつまでこうして一緒に入ってくれるんだろうと場違いな親心を芽生えさせている。 「あれ?ネル、」 「んー?」 小さくネルが振り返れば同じく黒も動いた。耳下、首筋に小さくある黒が塗れた緑色の髪の毛の合間から覗く。セミロングな髪の毛を束ねれば姿をあらわにさせるホクロ。 前に一度浦原と風呂に入った時に見つけた場所と全く違わずに一緒の位置にあるホクロに少しだけ苦笑いをしてみせた。 「やっぱ親子な」 「なんスか?」 「その言葉使い止めなさいって言ってるだろう〜っ」 「きゃあ!くすぐったいっス〜!」 蛍光灯が明るいバスルームで見た彼のホクロは彼自身でも気付かないくらいひっそりと襟足に隠れて一護を覗いていた。ネルの首元のホクロと浦原のホクロが重なって愛おしくてたまらない。 ネルといったんのバスタイム |