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浦原は死んだ様に眠るのが得意だ。
得意と言うよりは本人は気付いちゃないと思うのだけど、あまり息をしないから死んでるんじゃないかって疑ってしまうのだ。健やかな寝息も聞こえないなんて…一護は肘を付いてマジマジと浦原の寝顔を眺める。珍しく寝入ってる浦原の寝顔を見る。
整った眉にスっとした鼻筋、薄い唇に長い睫毛。不精髭はトレードマークで実は垂れ目。切れ長だから吊り目に見られがちだけど本当は甘い雰囲気の垂れ目だ。
どのくらい経過しただろう、なんとなく目が覚めて窓の外がほの明るいアコウクロウを連れて来ては室内を照らし浦原の表情に青白い光を反射させるから、時間を忘れてつい見入ってしまう。
額にかかる前髪を梳かしながら流す。露わになる額にくふりと笑い、そのまま指をすり抜ける絹糸の様な質感を堪能した。指が喜ぶ。見た目によらず浦原の髪の毛は一本一本が細くサラサラでゴムでまとめようがするりと落ちて上手くまとまらないのだ。癖っ毛のくせに。自分とは違った髪の毛を梳かしながら未だ起きる気配のない寝顔を見てた。
ほんと…死んでるみたいだ。
寝息ひとつ立てない浦原の寝顔にちょっとだけ怖くなって体を寄せて左心房へと頭を乗せ耳を寄せた。
トクントクンとくん、小さいながらも生命の鼓動が静脈を通して鼓膜へ突き刺さる。
ホ、当たり前のことがこんなにも安堵するなんて馬鹿げている。浦原の心臓が生きてる事に安心して顔をあげて、今度は違う角度から寝顔を見た。
喉仏が見える位置、男のくせに綺麗な鎖骨が魅力的なのだと受付嬢達が話してたのを思い出して鎖骨に指を這わしてみた。
冷たい。末端な冷え症の男はどんなに体をあっためようが激しい運動をしようがすぐに春冷えの餌食に体を蝕まれる。先程まではあんなに熱いと思っていた体温がもう無い。いかんせん浦原は蛇とワニのハーフで特殊とされてる人種の最高トップ13位に君臨する種族だったからだ。生粋の人間の血を引いてない彼はやはり人外な外見をしていなく人の目をやたらめったら引く。日本人としての色彩は兼ね揃えてないくせに名前だけは立派に日本名だからそれでも印象に残るのには十分な材料。事実、人の名と顔を覚えない一護でさえも一発で覚える事が出来た唯一の人物だ。
トクンとくん。一護の下で鼓動が唸る。鎖骨を辿っていた指先が何時の間にか顎へ移り、そのまま無精髭の感触を味わいながら今度は恐る恐る唇へと触れた。
ふに、ふにに。

「わ…やらけえ…」

思った以上に柔らかい唇の感触を指先はえらく気に入ってそのまま触る。ふにに、ふにに。時々自分の唇と触り比べては浦原の唇の方が柔らかいのだと知る。
君の唇って厚ぼったくて柔らかくて熱いね。
なんとも言い難い(褒めてるのかそうでないのか)形容で何度もキスを仕掛けては笑う浦原を思い出す。
お前のが柔らかい。
ふにふにふにに、その感触を一度味わってしまえばもう離れられない。夢中になって触れてると何時の間にか腰に腕を回されていた。

「起きたか?」
「ん……なに、くすぐったい…」
「お前ウソツキだよな。お前のがやわらけえ」
「なん、の話しだよ……ねむ…」

僅かに見開いた片目の緑がキラリと光ってワニの瞳を一護に見せた。
普段では嫌味ったらしい敬語のくせに、寝起きの時だけは年相応に砕けた物言いになる。しかもちょっとだけ乱暴だ。

「唇やわらけえ」
「んー……」
「こら!寝るな。起きろよ、目え覚めて退屈なんだ」

ツンツン、抗議と共に前髪を引っ張れば一護を横抱きにして寝の体制に入った浦原の瞳がぱちりと嫌そうに開く。

「…あんたねえ…明日休みだからって…ちょ、寝かせて。」
「やーだー起きろって俺が退屈なの!」
「…ピロートークがお望み?」
「別に」

ハア、大袈裟に吐き出された溜息が一護の前髪を揺らした。あ、このクソガキまじで面倒だって思ったな。瞬時に悟って耳の裏を悪戯にひっかく。キラリ、講義の瞳が一護を射抜く。

「子守唄うたってあげるから」
「やだよお前へたっぴだもん」
「へ…、…音痴ではない」
「だって音楽の評価2だし」
「どこ情報?」
「阿近くん」

アイツころす。などと物騒な事を小さく呟く浦原は漸く覚醒してきたらしい。寝汚い彼はこうして起こしてやらなければいつまで経っても体温調節を自らしようと思わないのだ。
平熱34,3度、これ以上でも以下でも変動しよう物ならすぐにガタがきてしまう。蛇は体温調節が苦手な爬虫類だから尚更、ワニの血液が混同してる彼は一族の中では最強に面倒臭い存在だろう。
面倒臭い存在な彼本人も面倒くさがりな性格で一護に尻を蹴られてやっと重たい腰をあげてのろのろと身支度を整える。そんな彼は今年でやっと18歳。一護との歳の差は5歳と大きく開いている。

「あいつと何話したの」

低い、明け方の低温が一護の鼓膜を突き、のしりと覆い被さった浦原の垂れた前髪をつんつん悪戯に引っ張る。
んー。考える素振りを見せるも実は何も考えてない一護の瞳はワニの瞳を見る。
緑色だけど中心は透明なくらいの金色。綺麗なグリーンアイズが拗ねた色を見せた事にくつりと笑っては意地悪に目を細めた。

「なんも。ただ音楽の授業が最悪だって、そんだけ」
「…他は?」

つんつん引っ張りながら、不精髭に指を這わして撫でる。
拗ねてんのかよガキ。
意地悪な琥珀色が浦原を見上げる。

「拗ねて悪いか」

そう言いながら一護の首筋に長い鼻をあてて、あの柔らかな唇は悪戯に鎖骨へとキスを送って甘く噛む。
お天道様はもう空の上に降臨なさった、Dopo che il sole è vuoto.綺麗な発音で一護は舌を動かして拒否を示すも、体は浦原を迎えている。
厄介な大人だなあ、そう考えながら不敵に笑んで一護の弱いところに舌を這わせては甘えた声でキスをせがんだ。
子供だって思ったら痛い目みますよ先生、ジョークに聞こえない柔らかな口調で下唇を舐める彼が可愛い。


























ワニの眼が綺麗で少しだけ乱暴




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