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夜から雨が降った、それは小さいけれど確かな冷たさを持って芯から体を冷やさんとする雨だった。
ごうごう、ついでに窓を叩く風も強くなったから一護は暗い室内の中で時間を確認した。携帯のディスプレイに表示された時間は0時55分。真夜中と言える時間帯に雨はしっとり静かに空とアスファルト、家の屋根、庭、学校の屋上、建物の窓と言える窓全てを濡らす。街も寝静まっているのに空だけがセンチメンタルにも泣き出している真夜中に一護は5分近く窓を打ち付ける雨の粒をただじーっと見つめていた。
乱暴でないのに何粒も窓に当たる音が酷く乱暴に聞こえ始めた時、一護はベッドの上から起き上がり寝間着用の灰色スウェットの上からパーカーを羽織る。それから忍び足で階段を下りて静かに玄関を閉めてからは傘も差さずに走り出した。
彼は、冷たい人だ。
体温は勿論の事、キレイだと思う金色の瞳も冷たくて、指先なんて氷みたいに冷え切っている。
今日の雨はなんだか一段と冷たく感じた。降り注ぐ小雨はずぶ濡れまではいかなくとも一護の体温を布越しから奪っていく冷たさを持ち揃えている。ああ、冷えちまう。感じた分、足取りは軽くなって走るスピードが徐々に上がった。ついでに息も上がってしまう。

キミね、生身で来たら濡れるとか冷えるだとか考えないわけ?開口一番の発言も冷たい男は店のシャッターを上げ、壁に凭れかかりながら紫煙を吐き出してはスっと冷ややかな視線を投げて寄越す。
きっと浦原喜助を知らない者であったならば背筋が凍っていただろう視線。きっと浦原喜助を知らなかったあの頃の一護ならば固まっていたであろう視線。
けれど今の一護は慣れてしまっている。彼の冷たさに、体の芯から慣れてしまっている。

「浦原さん」

吐き出した名前と共に白い息が上がった。10月半ばのこの時期に白い息とか、いよいよもってこの人に体温を全て奪われていってるみたいだ。
あの冷ややかな目に。
浦原さん、一護はもう一度彼の名前を呼んだ。サアアアと鳴る雨音が一護のか細い声に被る様に浦原の上へ降り注ぐ。
チっ、小さな舌打ちと共に一護の腕を取って引き寄せる浦原の体はすっぽりと成長途中で華奢な体を包み込んだ。
あ、浦原さんの香り。
唐突の、予想だにしなかった抱擁に一護の体は一瞬震えたけれど浦原の纏う香りに心が和んだ。
なんでキミが冷たいんだ。
耳元に掠める声が泣きそうな色を含んでいる。
一護は知っている。この男はワザと冷たく見せているだけだと言うことを。体は末端の冷え性で治りそうにもないけれど、本当はとても暖かい男だと言うことを一護は知ってしまった。
腰に回され力一杯抱き締める逞しい腕も、耳にかかる声色も、かける言葉も全てが全て暖かい。
雨が降ったからあんたが冷えてるんじゃないかと思って。
一護はそろりと浦原の背中に腕を回しながら言う。
なんですかそれ…お風呂入んなさいな。
フと冷たく笑った浦原の吐息が耳にかかる。
お風呂に入りなさいと言っておいて抱き締める腕の力は先程よりも強い。それがとても暖かだ。
























本当は誰よりも温かい癖に、




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