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「恋ってなんだ…」
「ラブ」
「甘酸っぱい」
「セックス」
最後の台詞は恋次だ。最近、小さい頃からずっと片思いしていた幼馴染とやっと付き合い出せて浮かれているもんだからそんな頭沸いた単語しか出てこないのだ。有無を言わさず殴る。
「なんだ一護、誰かに惚れたか?」
修兵がキューを持ちながらにやける。PV撮影が無事に終了して、その後はフリーになった。久しぶりにメンバー全員がオフになったのでちょっと遅めの夕飯食べて、呑みに出かけて、今はビリヤード台がある馴染みのバーでワンゲームをしながら酒を飲んでいる。
ジントニック3杯で既に一護の頭の中はポワポワしていた。だからこんな発言が出来るのかも。今日は酒に頼る事にする、だってもう本当に訳が分からない所まで来ている。
「…しらねーよ…そんなん…てめぇ自身の事なのにわからねーから聞いてんじゃねーかふざけんな」
「…おーい一護?お前何杯飲んだんだよ?」
ぶつくさと俯きながら言う一護の顔を下から覗いて修兵はあーあ。と溜息を吐く。その際に頬に触れた修兵の手の平が心地好い冷たさで抵抗など見せず、そのまま放置しておく。
そういえば、あいつの手の平も冷たかった。
「何してるんだお前達は」
「あれ斬月さん、帰ったんじゃなかったんすか?」
恋次がコロナを呑みながらそう言い、声の聞こえた方をゆっくりとした動作で振り返る。
「…え…なんで…」
斬月の後ろから店内へ入ってくる浦原を見つけてそう小さく呟いた。その瞬間、修兵の手の平が首元へと降りていく。冷たい指先が肌を撫でた事に体が反応してビクリと動いた。
「一護、お前本当大丈夫か?」
「…へーき…」
どうしよう。ドキドキする。いくらアルコールのせいにしようと、心臓の高鳴りが煩くて耳鳴りさえもする。少しだけ眩暈がして修兵の腕に縋り付く様に体重を預けた。
「お前…もうここで終わりな。すみません、ウーロン茶下さい」
修兵の胸に収まる様にして凭れると、目の前は赤黒いシャツの色彩が覆う。もうあの心臓に悪い金色が見えなくなった事に安心したのと反面、少しだけ残念な気分になる。
「一護はどうしたんだ?」
「あー…こいつ酔っちゃったらしくて…斬月さん…そちらは?」
ポンポンとあやす様に背中を撫でられる。優しいそのリズムが今は心地好い。
「ああ、一護の写真集を任せてるカメラマンの」
「どうもー浦原喜助と言います。以後、お見知りおきを」
軽い口調であの甘い様な低い様な声が瞬く間に一護の鼓膜を突き破り、心の中をいっぱいに満たして呼吸困難へと陥れる。
「………はっ!?あの、…あの浦原喜助!?」
一番最初に叫んだのは修兵、続いて恋次、グリムジョーなんかに至っては狙いを外してキューボールをポケットの中に落とす始末だ。
どの浦原だよ?と顔を上げて見れば、困った様に頭をかきながら笑う浦原が目に入る。
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