意地の悪い目だ。最初の頃はただただそう思うだけで、正直な所、気に食わないダントツ一位の目だった。
綺麗な金色の瞳、よくよく見ると睫も薄いブラウンで光があたる度に影を作る。長い睫に綺麗な金色、生まれ持っての美をこの男は意図も容易く意地の悪いモノへと変えてしまう。全く、もったいねーの。だなんて思いながらも突っ掛かる事は忘れない。最初の頃はそうだったはずだ、互いに。
可愛げの無い言葉を吐いてはその言葉の倍以上も意地の悪い言葉を貰う。棘だらけの言葉の応酬。浦原が意地悪な発言をする度に金色は悪戯っぽくもニヒルに光り歪む。あーあ、勿体ねーの。彼の金色が意地悪く光る度に心の内側、その奥の更に奥の部分でそう思っていた自分がいた。
あの意地悪な金色が今ではどうだ、こんなにも甘く光るだなんて。
思わず見惚れてしまってはチカチカ時を刻むデジタル時計の無機質な音に気付かされる。危うく、彼の金色に溺れてしまう所だったらしい。
"近い"
決して近い距離にいるわけでもない。だが、隣に居ることは確かなので、髪の毛を弄ぶ浦原の手を軽く叩く形で触れる事を拒否する。
大きすぎるソファに二人して腰を下ろしてはいるが、座っている位置が近いせいか余分なスペースが目に余る。二人で占領するには無駄に大きすぎて、近くなった距離に違和感を感じさせない程だった。だから困る。一護は浦原から目を反らしてテレビのリモコンを手に取りながらチャンネルを変えた。
先程まで観ていた映画は物語の最後に中途半端なBGMを奏でていた。"We found love in a hopeless place,"私たちは希望のない地で愛を見つけた、なんとも皮肉なものだ。ク、口角だけを上げてやや自嘲気味に笑んでみせる。
ラブソングなんて聴きたくないと本気で思ったくらいには、今の一護の心は荒れていた。
浦原が、スキだなんて言葉を発するからだ。
荒れた心は意図も簡単に醜い感情ばかりを止め処なく溢れさせて胸を一杯にし、そして窮屈にさせた。
やっぱり苦しいのだ。どう足掻いたって苦しいなら最初っからしなければ良かった。金色の甘い海になんて落ちなければ良かった、窒息するくらいなら溺れなければ良かったなんであんなにも浮かれてた?なんで…恋が出来ると、あの時は簡単に思っていたのに。なんで。