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年中無休でバスケに励んで四六時中お腹空かせて冬でも平気で走り回っては暑いといってジャージを脱いで半そでで過ごす健康優良児が風邪を引いた。
秋から冬に入る一歩手前の肌寒いのか暑いのか分からない曖昧な季節に流行りだした風邪にまんまと引っ掛かっては三日間寝込んでいるらしい。
だあっからアレ程気をつけろと言ったんだ。
浦原は携帯の画面を睨みつけながら歩く。二人で購入したカーディガンだけでは物足りなくなったくらいの季節、いくら体育館内であろうが暖房が効いてて暑かろうが半そでで運動してそのまま滴る汗を拭いもせずに夜風で体を冷やせばどんなバカでも風邪を引く。バカと言うには少々言葉が乱暴だが、自宅で寝込んでいるだろう彼は発熱してるにも関わらず自身が風邪だと言う意識がなかったらしい。部活中にぶっ倒れて保健室に運ばれて今に至る彼は熱で浮かされた脳内で何を思いながらこんなメールを寄越してきたのだろうか。優に10分くらいは携帯と睨めっこ状態な浦原は、アホ臭と独り言で締めくくり、スマートフォンをポケットへ収めながら先を急いだ。

***

途中のスーパーで買い込んだのは真たら、卵、そしてネギ。まるで夕方の主婦状態だな、袋からはみ出たネギを見てフと口角を上げて、KUROSAKIと書かれた表札下のインターフォンを押す。ピンポーン、ボタンの直ぐ下で鳴った様に鈍い音を発して数秒、「はい」とインターフォンから聞こえた声は彼の持つ声とは正反対でやけに可愛らしい。

「あれ?遊子ちゃん?浦原です」
「あ!浦原さん!ちょっと待っててくださいね!」

兄にも片割れの妹の方にも似ない彼女はおっとりと甘い笑顔を持つ可愛らしい少女だ。
何故こんな時間に?と自身の身分を棚上げして腕時計を見た。時刻は12時11分、丁度お昼休みの時間帯だ。
成る程、病人の兄の様子を見に来たのか。
ガチャリと開いた扉に向けて笑顔を送ればドアから顔を覗かせた少女が苦笑を返した。

「コンニチハ遊子ちゃん。お昼休みに抜けてきたの?」
「こんにちは浦原さん。うん!お兄ちゃん…朝は熱高かったから…今日はお父さんも居ないから心配で…夏梨ちゃんと交互で抜けてきたんだ…お父さんには内緒ね?」
「オーケイ、後はアタシが引き継ぎますよ?そろそろ出なきゃ午後の授業に間に合わないんじゃない?」
「本当ですか?浦原さんが居てくれたら安心です。でも…浦原さん?学校は?」

妹の顔から母親らしい顔つきになった遊子を見て苦笑しながら「内緒っスよ?」と人差し指を立ててジェスチャーすれば可愛らしく笑ってくれる彼女を見て思う。妹が欲しかったなあ。一人っ子の自分がそう思うのも無理はないくらい、彼女は理想の妹とも言える。その事をうっかり兄の前で漏らせば、険しい表情で遊子はやらんとすごまれて面白かったが、浦原が本気で欲しいと思っているのは彼女ではなかったのでなんとも言えない気持ちになった。
じゃあお兄ちゃんを宜しくお願いしますね、綺麗にお辞儀をした少女を玄関先で見送ってから鍵をかけ、台所へと直で向かった。

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