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MR.DARK SHADOW WAS SMILE SWEETLY.


最初はソイツ、黒のライダースーツに黒のヘルメット姿で現れたんだ!真っ暗闇の路地裏からさ音も無く現れたんだぜ!そっからもう、なあ?お前も見ただろう?(ジェームズ落ち着きなよ)これが落ち着いてられっかよ!だってなあ、凄いんだぜ本当!まるでアクションムービーを目前で披露されてるみてーだった!(まあうん、彼?は凄かった)だろう?仲間か?って思って少しビビっちまったけどギャングもビビッてな、んであっちゅーまにばったんばったんギャング共をなぎ払っていきやがった!(目にも止まらない速さだったわ)そうだ、まるでスパイディの様な速ささ!そんでワンミニッツもかからねーうちにギャング共は全員、地面にキッス!

MR.DARK SHADOW WAS SMILE SWEETLY.

昔はヒーローなんてもんに憧れていた。キャプテンアメリカにウルヴァリン、アイアンマンにバッドマン、スパイダーマン。様々なコスチュームに様々な正義との葛藤、超人的な力に屈強な精神力。とにかく強くてカッコイイから憧れていたし大人になった今でも映画で観る事のできるヒーローには忘れ去った童心を燻られてしまう。
今でも時々、こういう時にヒーローみたいなパワーがあったらなあとか考える事もあるが、子供の頃みたくヒーローのコスチュームを着てヒーローごっこに励む事は流石にない。フリークじゃあるまいし、と思う一護も今では25歳、立派な社会人であり、昔憧れてたヒーローとは程遠いが教員試験に合格してハイスクールの教員になっていた。謂わば子供達にとってのヒーローだ。

「なんてーのは体の良い押し付けだよな…まったく!、っヘイ!なんで止まらねーんだよ!」

手をあげ続けて既に10分が経過している。ニューヨーク・ブロードストリートからタクシーで約10分足らず、しかしバスや電車に乗れば30分以上はオーバーしてしまう場所に目的のホスピタルはある。暑くなって脱いだジャケットを腕にかけてネクタイを緩めながら時計を見た。既に時刻は5分を過ぎている、逸る気持ちが表情に出てしまい、乱暴なスピードで目前を通り過ぎていくイエローキャブにファックと下品に中指を立てて見せる。お昼時、そして今日は運悪くも金曜だ。既に職場から直帰する連中も居る事だろう。ストリートは平日の時間帯に比べて賑わっている。
これは…走った方が、それかサブウェイを使った方がマシか?
そう思いたって道路を渡ろうと足を踏み入れた時、イエローキャブの代わりに黒いネイキッドがブオンとエンジンを響かせて一護の前で停まった。一瞬の出来事に驚いてしまった体は咄嗟に背後へとのけぞらせ、一歩前に出してしまった足を戻そうと無理な体勢へ持っていかせる。絡んだ足、保て無くなった体勢は背中からよろけてしまった。

「先生」

うわ!と叫んだ後、転びそうになった一護の手を引いたバイク男は真っ黒いヘルメットの中で"先生"と呼ぶ。くぐもった声ではあったが、一護はアと口を開いた。

「何してるんスかこんなとこで」
「浦原…!お前、バイクは禁止だってあれほど言っただろう!」

相手がオフロードタイプのヘルメット前を開けたと同時に誰だか検討がついて名前を呼べば露になった金色がフとニヒルに笑む。

「通学には使ってないじゃない。デュアンリードに寄ってたの」
「ちげーよ!学生の内はって事だ!」
「イヤ。通学には使ってないんだから大目に見てよ。で?何してんスか先生」

大のバイク好きで、有名バイクスタントマンとしての叔父と祖父を持つ彼は彼等と同じくバイクスタントマンを目指しているのだと聞いた。
浦原喜助、金色の髪の毛に金色の瞳を持つ彼はプレイボーイさながらなハンサムなのにも関わらずバイクにしか興味がなく、協調性が全くと言って良い程無い。校内で浮こうがゲイだと陰口叩かれようが彼の世界にはバイクがあればそれで全てよし、な生徒で彼のクラスを受け持っている一護の頭を悩ます種でもある。
そんな彼が笑いながらバイクに跨っている。黒の大型ネイキッド、形としてはカタログで見た事のあるいたって普通のバイクでマフラーも改造されてる様には伺えない。ぎろり、一瞬だけ睨んでから掴んでいた浦原の手を叩き落とした。

「急いでんだ。事故るなよ!じゃあな」

説教は週明けな!最後にそう言い残し、手を振るって横を通過しようとしたら阻まれた。

「どこ?」
「はあ?」
「どこに向かってんの。送ってく」
「馬鹿言うな!生徒のバイクになんて乗れねー!DCに向かってんだ!」
「DC?それならコレで5分もかからない。なに?サブウェイ使うつもり?遠回りするから15分はかかるよ?」

グ、息を飲むしかなかった。浦原の言う通り、道路に面した大学病院は電車を使えばひとつ前の駅で降りなきゃいけない。例え10分以内で着いたとしてもそこから徒歩、否、猛ダッシュして5分はかかってしまう。

「タクシーよりも小回りが利く分、…うん。やっぱ5分だ。どうする?先生」

一護の考えを見透かしながらニヤリと意地悪く笑う金色にチっと舌打ちした。

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