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中々治る兆しも見せない傷の痛みにイラつき、無理に歩みを進めれば案の定と言うかなんと言うか…やはりズキンと痛んだ。"痛いに決まってんだろう"まるで傷口にそう言われているみたいでまたもやイラついた。イラついたその先でとある男に言われた言葉が脳内へと反映する事に下唇を噛み締める。
"我慢して無茶する事が君のモットーっスか?んな男勝りなモットーなんてさっさと捨てちまいなさい"
言いたい事だけ告げて、てきぱき手当てしてそのまま。女子の体に傷痕など残すな!ルキアは牙を向けてたが、彼にとって彼女の吠えは通用しない事は力の差で明らかだったし、彼の言う事も正論だと一護は思った。だからこそ、敢えて傷痕を残し、痛みを残してくれた男に少しばかり感謝はしていた。
一護が死神なんてややファンタジックな物になったのは去年の夏。他の誰よりも愛して止まない家族を救う為にルキアから分け与えてもらった力。今では一護の中ですくすくと育っていく大きな力。初めに出会った頃のルキアの時代錯誤な言葉使いも妙だったが、サポート役にと紹介された男はルキア以上にみょうちくりんな男だった。最初の頃こそ彼の扱いは酷い一護ではあったが接していく内に馬鹿みたいな気持ちを抱いてしまったのも変え難い事実。
女性と男性の力の差ではなく、圧倒的な力の差にひれ伏した10日間、女子に遠慮もする事なく刀を振り下ろしてきた男を単純に怖いと思った。これまで何度か男性に性的目的で襲われそうになってそれを返り討ちにして来てた一護でも、初めて女性としての本能から"怖い"と感じた初めての男。帽子に隠された金色は獣みたいな光を放ち一護を捉えて追う。なよっちいと思っていた腕は逞しく強かで一護を容赦なく掴んでは押し倒す。男の手にしとくには勿体無いあの綺麗な手は刀を持ち斬りかかる。声は、言葉は、辛辣その物で一護の心とプライドをズタボロにする。女性であっても強くあろうとした一護の心を容赦なく踏みつけてはぐしゃぐしゃにした。
なのに、地下から戻る際にへばって言う事を聞かない一護の体を抱き上げる両腕は優しくて逞しい。治療と言って傷口にあてた手の平は暖かい。"美人が台無しだ"と言って頬の傷を消した時の声が優しい。一護を見る瞳が優しい。刀を持つ浦原と刀を持たぬ浦原、どちらが本当の浦原喜助なのか分からないくらいにはそのギャップが激しくて一護の心は正にあの時で揺れ動き始めていた。


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