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番外編2


最終兵器起動中につき、

わこわこ、途切れる事なく綺麗に剥かれていくオレンジ色の皮。ふんわり香るオレンジの爽やかな匂いに浦原はくんくんと鼻を鳴らす。

「あー…やばい、コタツと蜜柑って本当にヤバイ…天国…」
「天国だって知ってるのになーんでお前の家には無いわけよ?ほら、剥けたあ」
「スペース無いし…」
「ちっちゃいのも出てんじゃね?一人暮らし用に」
「いやあ…買っちゃったら絶対外に出ないよ?学校いけなーい」
「じゃあダメだ。お前は買うな」

大きなバッテンを両腕使って作りながら一護はティッシュを1枚引いて、剥いたオレンジの実をそのまま浦原の前に置いた。

「しかも剥いてくれる人が居る…何これ…本当に至福…っ」
「…小さい幸せだなお前…」
「小さい幸せで結構、なんとでも言え。あー…幸せ」

机に頬を擦りつけてぬくぬくと温まっている浦原はまるで猫みたいだ。
ブラウン管向こうでは年末に近づいたお祭り騒ぎの様子を取り上げて芸人達がこぞって命がけのネタ披露に必死だった。良くやるよな本当、一護が言えば浦原は無言で剥かれた蜜柑を頬張る。

「…」

わこわこわこ、オレンジの実を半分に割って二口で食べ、直ぐ様次の蜜柑の皮を剥く一護を見る。わこわこ、綺麗に円を描いて剥かれる皮は蛇みたいにとぐろを巻いた。蜜柑の剥きすぎで指先が仄かに黄色くなってる気がする。
浦原の視線を物ともせず、アヒル口のままで鼻歌をうたいながら蜜柑を剥く一護はなんだかご機嫌だ。
新たな年を迎える一歩手前、世界はざわめいている。ブラウン管向こうの世界はあんなにも賑やかでやかましいのに、今居るこの場所はとても暖かでゆったり静か。ウトウト、少しだけ眠くなってしまった。柑橘系の大好きな香りと炬燵の暖かな温もりが浦原を包み込む。
わこわこ、わこわこ。音がこんなにも優しい。
浦原は目を閉じながらフフと笑った。

「…結婚してえ…」
「け…、」

うっかり出てしまった言葉は浦原がハっとして一護を見れば、手から剥きかけの蜜柑を落として固まっていた。あー…、後悔しても出てしまった以上、言葉は形として残ってしまう。

「ゆ、」
「一護さん…まった」
「遊子は渡さんぞ!!」

炬燵から出した手の行き場が無くなり浦原はえー…と遠い目をしてしまう。
一護さんが激にぶちんで良かったなあ、等と胸を撫で下ろし伏せった。少しだけ、ほんのちょこっとだけ悔しいではある。

「おい!こら!聞いてんのか!」
「あー…どうやったら認めてもらえるか模索中っす」
「だからお前にはやらんと言うとろうが!」
「お兄様って呼ばせてね」

気持ち悪い!一護は叫びつつも途中まで剥いてた蜜柑を手に取り剥き始める。
わこわこわこ、再び鳴る優しい音と柑橘系の香りに包まれて浦原は眠りの浅瀬へと落ちていった。






◆◆◆

冬休み中の浦原喜助くんと黒崎一護くん。
「………ハッ!!寝てた!え、もう21時!?一護さん!」
「うーん…蜜柑が…蜜柑が…っ」
「どんな夢見てんだ!おいこら起きろ!」
「いってえええ!」
炬燵は兵器。

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