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子供はベッドを見ると眠くなる生き物です

シャーっと唸りながら白いカーテンは勢いをつけて開く。ベッドひとつを囲む様に添えつけられたカーテンレールは少しだけ古くて所々で引っ掛かってしまう。
保健室の窓際付近にあるベッドは天気が良い日には暖かな日差しが入り混んで来て睡眠には心地良い。と、ヤツが言っていた。
締め切っていたカーテンに守られ、布団に埋まってすうすう健やかな寝息を立てる浦原はどこからどう見ても具合が悪そうな生徒には到底見えない。
この野郎、一護は声を荒げそうになったが寸前で我慢した。朝から見ないと思った浦原は予想通りに保健室で寝入っている。
保険医が居ないところを見ると、勝手に入り混んで勝手にシートに記入して勝手にベッドへ潜り込んだんだろうと数秒で想定する。
コイツの行動パターンなんざお見通しだ!昨日、録画しておいた某番組の口調を真似て心中で吐き出しカーテンを閉めてベッドまで近づいた。
ベッド脇にある椅子を引いて座る。スウスウ、一護が入り混んできた事にも気付かないで健やかな寝息を立てながら寝入っている浦原を見て眉間にきつく皺を寄せた。

「てめえ、寝過ぎだ。」

頬杖つきながら軽めに頭を叩いた。普段ならこれで起きる筈が今日に限っては起きる気配すら感じない。疲れてるのかな、閉じた瞼の下にうっすらと見える黒が浦原の疲労を充分に示している。
午後の強い日差しがカーテン越しに入り混んで来て浦原の金色をキラキラ瞬かせた。暖かな日差しに健やかな寝息にふわふわふかふかの布団は若干だが冷たくて肌に心地良い。うわ…、一護は自然に出始めた欠伸をどうにか噛み殺してベッドに顔を埋めてゆっくり瞼を閉じた。

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出席を取る朝のHRから姿を見ないヤツと、昼休みには廊下を元気よく走っていたヤツが見当たらない。越智は眉間に皺を寄せて教室内を見渡し、2つの空席を見てハアと溜息を吐きながら黒板に「少しだけ自習」と乱暴に書いて教室を後にした。
目指すは保健室、一人の生徒は大抵そこに居るか自宅に居るかだがもう一方はどうだろうか。考えを巡らせながらも保健室のドアを静かに開いて失礼しますと伝えれば50代を迎えた女性教員が笑い皺を優しく増やしながら静かに「あらいらっしゃい」と柔らかい挨拶で出迎えた。

「先生、うちの馬鹿共居ます?」
「あら、越智さんの所の子達かしら?」

ビンゴ、頭の中で浮かび上がった文字にこめかみがピクリと震える。

「帰ってきた時に二人一気に増えてたからビックリしましたよ」

うふふと柔和に笑みながら窓際の、一番奥のベッドへと二人並んで近づき、カーテンを静かに開けば案の定、予想していた通りに二人仲良く夢の中へと入り込んでスウスウ健やかな寝息を立てている。
浦原はベッドへ、そして一護は座りながらベッドに顔を埋めて寝ている。
器用だなこいつ。若干、寝にくい体制なのに子供と言うのはどんな体制でも寝入れる生き物らしい。

「きっと呼びに来たんだと思うけど…ほら、今日はとても良い天気でしょう?」

ぽかぽか日差しの暖かい春晴れ、風はまだ冬の残り香を含んで冷たいが射し込んでくる日差しはとても暖かで、これは眠たくなるなと納得するには充分な材料がここには集中していた。

「それにねえ…なんだか平和的で。ふふ、やっぱりどんなにヤンチャでも子供は子供ね、寝顔がとてもキュート」
「…先生…キュートって…こいつら図体ばっかデカイ子供ですよ?」

あらやだ、だから可愛いんじゃない。くふりと笑う教員には勝てないなあ、越智は頭をガシガシきながらもう一度寝入ってる生徒を見た。
スウスウ、いつだって眉間に皺を寄せて仏頂面の一護は穏やかな寝息を立てている。
スウスウ、鉄仮面だなんだと言われてクラスでは浮いている浦原も寝顔はとても健やかだ。

「ふ、やっぱり子供は寝てる時が一番静かで良い。…………というのは建前で、てめえら私の授業を堂々サボってお昼寝タイムとは良い度胸じゃねーか!!」

長い沈黙の後、暴走し始めた越智を見て、あらあらと呑気に笑いながら保険医は「平和ねえ」と呟いた。









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越智美諭から見た黒崎くんと浦原くん。
「あんたらの行動パターンなんざ全てまるっとお見通しだあ!」
「似てる」
「似てるな」




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