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キラキラのプリンセスと音の無いラブソング


ネルはお姫様みたいだね。
喜助が甘い声でそう言って笑うから世界一のお姫様になってやろうと思った。


camera:
キラキラのプリンセスと音の無いラブソング



11歳の頃、プロジェクト・ランウェイを観てからブラウン管越しの世界に憧れた。キラキラとした世界だった。まさにお姫様に相応しい舞台。
メーメイドドレスに身を包みクリスチャン・ルブタンを履いてステージを歩く自分が想像出来たそのヴィジョンの中、大人になった自分の隣には大人になった彼がタキシード姿でエスコートしていた。王子様像には遠いけれど、やはりネルの中では一番に王子様に近しい存在、それが喜助だった。
そんな彼が恋をした。
久しぶりに帰国した彼の瞳には疲労と少しの絶望が反映されていた。
写真を何枚か撮って本にしたのだと手渡された写真集の中のキレイな風景達。夕暮れのオレンジと夜のオレンジと朝日のオレンジと様々な場所で色褪せるでもなく強く主張してたオレンジ色の青年は年相応には到底見えず、彼の年齢を聞いてからは酷く驚いた。オリエントって年を取らないって言うけど本当だったのね!ネルの言葉に苦笑した喜助はどこか物寂しげ。
どうしたの喜助、問う前に彼の指先がオレンジ色を撫でたのを見て分かってしまった。ああ、彼は今、恋をしているのだと。女である自分の性別がこの時ばかりは嫌になる。女の直感というやつは馬鹿に出来ないね、ここにはいない彼に投げかけてネルは笑う。
お気に入りのレイバンのサングラスをかけて、ニット帽にロングの髪の毛をまとめて隠して、それから新調したばかりのスニーカーを履いてボストンバックを持って家を出た。


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あきゅろす。
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