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room69



十年来好きな友人が居る。趣味で経営してるモーテルの一室が自室で部屋ナンバーはシックスナイン。14室しかないのにシックスナインとつける下品なユーモアが好きだ。ドーベルマンを三年前から飼い始めている、彼女の名前はジュリアナ。なんともあり触れたビッチな名前が気に入らないが真っ黒の艶やかな毛並みが彼女に良く似合っている。起き抜けにフリスクを一粒口に含んでタバコを吸う。口内に広がるきついミントがメンソールをより強くするから好きだと笑う声は低くて掠れているからとても好きだ。
身長が高くてすらっとして細いのに鍛え上げられている身体はとても強かで美しく、ロシア系の血が流れているからメキシカンにはあまり見ない澄んだグリーンアイズをしている。名前はキスケで周りからはキースと呼ばれていて、癖っ毛が嫌いだから緩いパーマをあてて誤魔化していて、週に三回程ベガスに出稼ぎへ赴く。グレイのスーツをびしっと決めて無精髭は敢えて残しロレックスを利き手に巻いて願掛け、ポリスのどぎつい香りを纏ってギャンブラーとなって配られるカードのナンバーを打算的に愛する。頭の回転が早い彼には一度だってポーカーで勝てた試しがない。

ハイスクールで出会って恋に落ちて自身の性癖を彼によって教えられた気がした。どんな女の子と付き合ってもしっくりこなかったのは自分がゲイだからか、遅い開花を遂げた頃にはサノバビッチの不名誉な称号は尾鰭を巻いてついて来た。だがしかしそれは彼も同じで来る者拒まずの彼はサノバビッチよりも不名誉なフリークの称号をもらっていて今も現在進行形だ。一度で良いから女の子達が毒をまくし立てるくらいのベッド技を披露して欲しいだなんて口が避けても言えない負け犬はこうしてモーニングコールだけは友人と言う立場をフルに酷使して彼に決まり付けている。

朝の掠れたあの甘い声を電話越しに聞くのが一番下半身に直でくるからだ。耳から侵されている感覚が心に居座った乙女な自身を高揚させては今日一日も頑張るか!と言う気にさせる。お前の声はマジックだな、なんてフリーのライターにしてはチープな比喩を使っていつものように数十キロ離れた彼にコールした。
RRRR,RRR,
ハロー?
必ずワンコールの途中で取るのは彼の癖だ。意図は知れないけれど電話嫌いの彼が一護のテルナンバーだけを確認して電話に出る事がこんなにも嬉しいひとつの要因になってるなんて、一護はニヤけてしまった情けない表情を隠さずに耳に入ってきた掠れ声に挨拶を施す。

「ハイ、お前にしては珍しく起きてる声じゃないか」
「うーん…まあそうね。」

Mmm…そうして間を置いて話す時は必ずアヒル口になる彼を脳内に浮かべて苦笑する。些細な癖まで記憶しているのか自分はと思う度に末期だなとも思って、彼が見てない筈なのに照れた。
照れて前髪を弄る癖はジュニア時代から変わっていない。

「どうしたよ、なんかあったのか?」
「んー…ねえ一護さん」
「ん?」

ねえ一護さん、甘ったるい声色。甘える時に出す些細な声の変化でさえ聞き逃さない一護の鼓膜はキスケの声一色に染まっていく。
なんつー声出すんだよコイツは!
今のところ、なんとかぎりぎりで理性をとどめているにしろ、この声を直に聞いたらヤバイかもしれないなとキスケには悟られずに溜息を洩らした。


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