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官能的に挑発してみせろよ


外には月に数回しか出ない。四六時中家ン中にひっこもって、変な甚平姿で無精髭は伸び放題。放っといたら3日風呂に入らない事なんてザラで毎日毎日飽きもせずエロい小説ばっかり書いている。とても、変。ってかおかしい。ってか変態。ってか、つまんない奴。
ギャンブルもしない、金使いも荒くない、ファッションには興味なし、音楽にも。せっかく綺麗な顔立ちで生まれてきてるってのに女にも興味が無い。エロ小説書いてる癖に現実のそういう行いには全く興味が無い。

「ほんっとどうかしてる!」

2日訪れなかっただけで浦原宅はそりゃあ末恐ろしい事になっていた。散乱するコンビニ袋の中には食い散らかした弁当箱の残骸と、くしゃりと丸められた煙草ケース。ビールの空き缶も転がっていて卓上には中身が残っている物もあった。
もっと酷いと思うのは片付けても片付けても後から出てきては雪崩を起こしそうになるエロ雑誌やら漫画やらの本、本、本!きっとこれだけでエロ図書館が作れるに決まってる!一護は奮闘しながらも散らばる雑誌をひとつにまとめていた。

「あー!一護さん!それはダメ!それは捨てちゃだめ!」

数冊を重ねてぎゅうっと紐で結んだ瞬間に浦原が珍しく声を張り上げたものだから一護はビクリと肩を揺らす。

「なにがだよ!」
「これ!これは貴重なんです!」

一番上の雑誌を指さして紐を解く。

「あー!折角くくったのに!なにしてんだよ!」
「アイタ!痛い痛い、一護さん!痛い!だーから!これはダメなんですってば!って痛い!ごめんなさい!!」

弁慶だけを狙って蹴りを入れてたら痛みに堪えかねた浦原が情けない声を出して謝る。しかし、手にはしっかりと雑誌を引き抜き、そして抱き締めている。ただの、エロ雑誌をだ。

「ぬわあにが貴重だ!ただのエロ雑誌じゃねーか!」
「あ!馬鹿にした?今、エロを馬鹿にしましたね!童貞の癖に!って痛い!ほんっと痛い!ごめんなさい!!」

今度は容赦無く腰辺りに蹴りを入れる。
そんなにエロが好きならエロと結婚してしまえ!と前に一度言えば真剣な顔をして「出来る事ならしたいです!」と主張されたので、あの時ばかりは流石の一護も引いた。

週に一度のお片づけ。浦原宅で唯一綺麗な場所は台所だ。
昔は週に3回程度、夕飯を作りに来ていたが最近ではほぼ毎日、一護が浦原の食を管理している。台所は一護の城。そこだけはいくら家主の浦原にでさえも穢させてなるものかと、いつだって目を光らせているからだ。

「お前…仕事場くらいは綺麗にしとけよ…台所の方が綺麗とか洒落にならん」

渋々、浦原の腕に抱かれたエロ雑誌は諦め、残りの数冊を紐で縛り直す。

「そうっスよね。台所、綺麗だから凄いビックリ。あんまり綺麗過ぎたから三回くらいあそこで寝ちゃいましたよ僕」
「……ヒクわ」

どんなに綺麗だからと言っても、あくまでも台所である。
冷蔵庫には生野菜とか肉だとか卵だかとかが入っているし、生ゴミだって冷凍庫でキンキンに冷やしてG対策も行っているが、いくらなんでも台所で寝るには気が引ける。引けると言うか絶対に、寝ない。

「おいムッツリスケベ。お前3つ持てな。」

数冊纏められた雑誌に目を向けて一護は4つ持った。

「えー!3つとか!これ何冊まとめ?…げ!11冊!?重いですって!」
「あー?俺、4つ持つんだけど?」
「持ちます!持たせてください!」

地元のヤンキー連中が一斉に固唾を呑んだと言う殺意の篭った視線で睨みあげれば、背筋をピンと伸ばして挙手する。浦原は現金である。
そんな浦原を見てチっ、と聞こえる様に舌打をした後で雑誌を持ち上げた。その際、足元に落ちてたナニかを踏んでしまい体制が保て無くなった。コロリ、小さな物体は一護の足に踏まれ、そして滑る。同時に一護の身体も背中から倒れた。

「あっぶな!!」
「うあっ!」

しまったと思った時には既に視界は天井へ。
身体が受ける打撃に身構えて強張った。それでもダメージは然程大きくなく、一護はそろりと目を開く。
真新しい畳が先に視界へ入り、次には見慣れた甚平の緑が見える。

「す…凄い…一護さんの体重プラス数十冊の本のおも…み……」
「なにやってんだお前」

一護の身体下、下敷きになる様な形で事切れた(風を装う)浦原を見て眉間に皺を寄せた。

「助けたのに労ってくれない…この人…」
「つーかそれで助けたつもりか。お前も一緒にぶっ倒れてどうすんだって話しだよ貧弱ー。喜助の貧弱ぅー」

挙句の果てにはシクシクと泣き真似まで仕出かした浦原の頬を指先だけで突っついてからかう。すると金色の瞳がギラリと光って一護を見るから、勝気に笑んで口端にキスをした。
軽めに触れた音が可愛らしく鳴る。
倒れたと同時に散らばった無数の本。基、エロ雑誌。
あーあ…一から片付けなきゃ。心中で思うも、一護の施した悪戯なキスに本気になった男はこのまま止まる事は無いだろうと踏んで徐々に深くなる乱暴な口付けを甘受して瞼を閉じた。


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