□■Katsuragi×Other List
(Kt×Kal)Welwitschia(奇想天外)
ミロクに言われて書類と伝言を届けに来たカルは、肝心のアヤナミが緊急会議に出席していると教えられて別室で待機していた。
することもないので少々暇だが、このような事態には慣れている。
嫌がらせのように呼び出されることが多いアヤナミのことを、ミロクもきちんと把握しているので、多少帰りが遅くなったところで問題はない。
テーブルに書類を置き、来客用のソファに座るカルの耳に軍靴の音が届き、二度のノックのあと、間を置かず扉が開いた。
「申し訳ございません。参謀長官は会議が長引くそうで、もう少々お待ち下さい」
入ってきたのは大佐の階級を持つ男だ。
目線で、そのままで、と制されたので、カルは座ったまま会釈をするだけに留める。
ふと、カルの表情を見たカツラギが、少し首を傾げるようにした。
「お疲れのご様子ですね」
「え、ああ……」
カルはとっさに表情を作り損ねて、無防備にも素の表情を晒してしまう。
そのようなことはカルにしては非常に珍しいのだが、それは不意打ちのせいか、それともカツラギが持つ穏やかな空気のせいか、判断はつかない。
「……お気遣い頂くほどでは」
ありませんので、と続けようとしたカルは、テーブルにグラスを置かれて続く言葉を呑み込んだ。
「どうぞ」
待たせる間、せめて飲み物くらいは出そうということか。
他の上層部の人間が訪れたときにはうるさいのだろう。カルも、ミロクに来客のあったときには必ず茶と茶菓子を用意する。理事長の元を訪れる客はたいがいが高位の軍人か貴族で、彼らは態度で、酷いときにはストレートに言葉で、もてなしを要求するのだ。
カルはレモンの添えられたグラスを取り上げ、口をつけた。すっきりとした良い香りが引き立っている。
普段カルは、コーヒー派であるのだが。
紅茶というのもなかなかに美味い。
新たな発見をしたところで、カツラギに出て行く気配がないことに気付く。
立場上、また性格上、カルは情報収集を日常に組み込んでいて、機会と時間があれば談笑と称した腹の探り合いを展開するのが常であるが。
まあ、いいか。今くらいは、このままでも。
のんびりした空気にそんなことを考える。
アヤナミが帰ってくるまで、あと三十分の猶予があった。
END
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