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□■Katsuragi×Other List
(Kt×H)水曜十五時、本日は晴天なり
「カツラギ大佐、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「はい。何でしょう」

自席に戻るところを呼び止められ、カツラギはそちらへ足を向けた。

ブラックホークの執務室には、珍しく二人の他には誰もいない。コナツは(ヒュウガの分の書類も捌いていたせいで)遅い昼食を摂りに食堂に行ったし、カツラギ以外の佐官は、参謀長官室でアヤナミから次の作戦についての説明を受けている。

「次回の会議についてなのですが、このままでは案が通らないかと」

こちらです、と渡された書類を受け取り、カツラギはざっと目を通した。
クリップで留められ、重要箇所に付箋が貼られているあたりにハルセの几帳面さが窺える。

「そうですね。少し修正する必要があるかもしれません」

思った通りを正直に述べると、ハルセは眉尻を下げて困った顔をする。
嘘がつけない人柄であるというか、感情が表に出る素直さは、見ていて微笑ましい。

カツラギはもう一度書類に視線を落とし、内容を頭に入れた。
これが通ればブラックホークの益にはなるが、通すとなると、確かに中佐補佐一人では難しい。

「私に任せて頂けますか? この手の案件には参謀部に異動になる前に携わったことがあるので」

カツラギの提案に、ハルセは驚いたようだった。
いえ、お忙しいのにそこまでして頂くわけには、と辞退の意味で首を振る。

「構いませんよ。繁忙期でもありませんし、それに私はあなたに借りがありますので」

以前、カツラギが別の用事で午後から席を外さねばならなかったとき、常はクロユリ専用の菓子のみを担当するハルセに、他のメンバーの分の軽食も頼んで作ってもらったことがあったのだ。

忙しいブラックホークであるし、何より上官が食に興味を見せない人であるから、彼らの健康維持のためにはカツラギが作る軽食は不可欠だと言っても言い過ぎではない。

戦闘には秀でていても『作る』ということに親しみのないメンバーのために、ハルセが手作りの菓子を振る舞ってくれたことに、カツラギは感謝していた。

「……では、すみません。お願いしてもよろしいでしょうか」

「はい、わかりました」

ハルセが申し訳なさそうな様子で礼儀正しく頭を下げる。確かに承りましたと頷くと、「このお礼は近いうちに必ず」と言われて、カツラギは面食らった。

「私から言い出したことなので、お礼など必要ありませんよ。言ったでしょう。私はあなたに借りがあるのだと」

カツラギは優しく諭すように言う。
しかしそれでは気が済まない、とありありと見て取れるハルセの表情を見て、カツラギはどうしたものかと思案する。


結論。


「では、せっかくですから頂きましょうか」

「はい。私は何をすれば……」

ほっとしたような表情を見せたハルセが言い終わらないうちに。
カツラギはハルセの顎に指を引っかけて上向かせ、風の軽さで口唇を奪った。

そうして微笑む。

「これでもう、貸し借りはなしですよ」




その後。

うつむいてしまったハルセが耳まで真っ赤にしているのを見て、カツラギはさすがに冗談が過ぎただろうかと反省することになる。

END


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