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□■Katsuragi×Other List
(Kt×T)その瞳に宿すもの
ほんの僅かな空いた時間に。

会議が長引きすぎて次の予定が急遽キャンセルにせざるを得なくなり、折角の『暇』をひろい要塞を散策する時間に当ててみた。この要塞は広すぎて長年ここで暮らしているにも関わらず、足を踏み入れた事の無い場所がいくつもある。最近感じていた運動不足の解消にでも丁度いいだろう。

気の向くままに足を向けた。


そして。


瞳に何もうつしていない子供を見つけた。

要塞にいる子供といえば、それは奴隷しかいない。その子は戦闘用奴隷のようで、腰に子供が持つには物騒なものを携えている。

その瞳があまりにも印象的な、くすんで見える翡翠。

この子の瞳が輝いていたのなら・・・
愛玩用の奴隷として少しはましな生活をおくれていたに違いない。

奴隷にありがちなやせ細った身体。

子供が纏うにはあまりにもらしくない殺気。この子の行く末は・・・戦場の藻屑となり、誰ともわからない者たちと共に葬られる。軍のコマの一つとなり、人ではなく道具と同等に扱われ。

これもこう産まれてきた運命。
抗うことの出来ない渦。

もうこの子に会うことは無いだろうと、時間が迫ってきた次のスケジュールをこなすべく、もと来た道を引き返した。




それが幼い頃のテイト=クラインを見た、最初だった。
今思えば・・・あの時。




あの子供に惹かれた理由が、彼の背負っている使命だったのだと理解できる。使命と運命が交差する蜘蛛の糸を断ち切るような切欠を感じさせるような。


この関係は、
禁忌。











アヤナミに付き添って、士官学校の卒業試験を視察することとなった。例年通り、泣き叫ぶもの、壁にぶつけられ気を失うもの、己の力量を知らずに傷を受けるもの・・・。

今年も不作だとアヤナミに告げようとした矢先。

あの子を見つけた。

その翡翠は輝きを取り戻し、身長も伸びて。ああ、何とかこの歳まで生きて来られたか・・・。


しかし、
詰めが甘い。
止めを刺せないのであれば、必要ではない。
命令に従わないとどうなるか。
この子が身をもって、ここにいる学生たちの誰よりも知っていることではないか?


今日の命令は
『殺す』

アヤナミのザイフォンが罪人の首をはねた。













テイト=クライン。
アヤナミに楯突いて牢に幽閉されるとは愚かなことを。
帝国軍に所属している限り、犯してはいけない罪と敵に回してはいけない人物。彼は理解できなかったのだろうか。

それとも。

それを知りながらも抵抗せずにはいられない、『何か』があったのか。


「テイト=クライン、ですね」

無知で無謀な少年の前に立つ。
両手足を拘束され、壁に繋がれている。
散々抵抗したのだろう、その華奢な手には血が滲んでいる。


「・・・・・・・・・」


無言。


「私はアヤナミ参謀直属部隊大佐、カツラギです」


「・・・・・・・・・アヤナミ?」


彼が反応を示した、アヤナミの名。ゆっくりと項垂れていた頭が持ち上がる。光を取り戻した翡翠がカツラギを捕らえた。


「はい、アヤナミ様の部下です」


「そんなヤツがいったい何の用だ。殴りに来たのか」


この状態になっても威勢を失わないとは、さすが元戦闘用奴隷。
あのまま大人しく軍に飼われていれば良かったものを。


「殴りはしませんよ、テイト。今日はあなたに聞きたいことがあって来ました」


「俺は何も話さないし、知らない」


「ええ、そうでしょう。私が聞きたことはラグスに関することではなく、あなた自身についてです」


「俺・・・?」


こんな表情も出来るらしい。
中々可愛い反応をする。


「はい。わかっていながらアヤナミ様を敵に回した理由を。元戦闘用奴隷のあなたならいやと言うほど知っているでしょう?生きていくには何に従い、どうあるべきかを」


手にはめている布越しにテイトの頬を触る。
顎を伝い、指で顔を上げさせる。


「はなせっ!!」


「中々威勢がいい。さあ、質問に答えていただけますか、テイト。私はあなたに興味が湧きました」


そろりとむき出しの首に指を這わせる。


「お前に何がわかる・・・」


喉の奥から搾り出されたかのような声がカツラギに向けられる。


「おや・・・そんなありきたりな返事しかできませんか・・・。あなたならもっといい『お返事』をしてくれると思ったのですが・・・失望しました・・・」


「な、何をっ・・・」


「あなたが敵にしてしまったアヤナミ様の部下の返事が気に入りませんか?願ったり叶ったりでしょう?アヤナミ様に刃向かった時点であなたは私の敵なのですよ、テイト=クライン?」


「・・・・・・・っ」


「それとも・・・他の軍人とは違う質問をした私に興味があるのですか?気に入られようとでも思っているのでしょうか?」


「ちがう・・・・っ」


「ええ、そうでしょう。あなたは私の敵だ。いっそここであなたを殺してしまいたいくらいには、私は思っていますよ。しかし、私はあなたのような馬鹿ではない。最愛なるアヤナミ様の命令は絶対なのです。アヤナミ様が生かせと仰るのであれば、どのような方法を使ってでもあなたを生かしますよ、テイト」


「があああああっぁうっ!!」


布越しに伝わる喉の感触、締め付けられて苦しむ息。


「しかたありませんね。今日はこの辺にしておきましょう。また明日来ますよ、テイト。それまでに先ほどの返事をまとめておいてくださいね。私は気が短いのです」


途絶えてしまいそうになる細い息を繰り返す、テイトの唇に。


口付けた。


「では、また明日。テイト」


END


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