□■katsuragi×Hyuuga List
それはまるで○○の関係
彼らはまるで親子みたいだ。
「こんな感じでいいかな。」
「ええ、大丈夫ですよ。」
そんな声を聞きながら、俺は部屋に備え付けられてあるテーブルに座っていた。
つい先程までは台所に一緒に居たのだが、手伝う様子のない俺に痺れをきらしたクロユリが睨みつけてきたのを見て、カツラギさんからお茶菓子を頂いてこちらに退散してきたのだ。
そんなわけで俺は今、出されたきんつばと抹茶に舌鼓を打ちつつ、ちらちらと台所を覗き込んでいたりする。
二人が作っているのは小さなホールケーキだった。もうすぐハルセが誕生日らしく、何か渡したいが当日は既に遠征に行くことが決まっているので、少し早めに作っているというわけらしい。
そのケーキ作りも終盤に差し掛かっているらしく、カツラギさんが用意したホイップクリームで何度か見目を確認しながら模様を作っていっている。
すごく見てみたいのだが、万一俺が行って失敗したらクロユリが怒るだろうし、動こうとする俺をカツラギさんが目線でやめなさいと言うので横向きに椅子に座り遠くから眺めることしか出来ていない。
「できた!」
嬉しそうな声を上げてクロユリが最後の飾りつけ・・・イチゴを乗せ終わる。それを見計らって台所の入り口まで行くと、クリームとイチゴだけの、シンプルなショートケーキが出来上がっていた。
「おー、おいしそうに出来たね。」
「ヒュウガ!食べちゃ駄目だよ!」
味はカツラギさんが一緒に見ていたから折り紙つきなので、素直にそういったらクロユリが再度キツイ視線を送ってきた。人にあげるものを食べるわけないよと笑って言うと、怪しそうに見て、はっとしたように片目を大きくした。
「そうだ、ケーキ箱持ってきてないや!」
取りに行ってくる!と言うやいなや飛んでいったクロユリを見送りカツラギさんを見ると、既にほとんど後片付けは終わっているらしく、汚れたシンクを掃除しだしている。
「カツラギさん、お疲れ様。」
横に行って話しかけると彼はいいえ、と言いながら顎に手を掛けて顔を引き寄せてくる。
突然の行為に目を丸くしながらも甘んじて受け入れれば、触れた唇に少しだけ舐められて、俺は首を傾げる。
「どうしたの?」
「甘い匂いに誘われました。」
問いかければすぐにそんな答えが出てくるので、あ、最初から近づいてきたらそうするつもりだったんだなと苦笑いを浮かべてしまう。
「あんまり疲れては、いなさそうだねえ。」
それならもう一品、甘いものでも作ってほしいなあと口に出す前に、ヘタをとって少しだけ砂糖をかけられたイチゴが丸皿に載せられた状態で渡された。
「私のデザートを食べ終えるまでは、疲れたりはしませんよ。」
余ったイチゴです、と差し出されたそれとフォークを受け取って、なんとなく視線を泳がせながらテーブルまで戻った。
来た時に、シンクに並んでるクロユリたちが親子みたいに見えたけど、俺とカツラギさんが同じように並んだ時、どんな風に見えるんだろう。
「・・・まあ、そもそも並ばないと思うけどさ。」
「何か言いましたか?」
「なんでも。」
まあ、ベッドの上では捕食者と被食者で間違ってはいないんだろうけど、そう思い、少しだけ熱くなった体を甘いイチゴで誤魔化した。
そもそも関係性が曖昧なのだ。俺はカツラギさんからごはんと甘いものを貰って、カツラギさんはごはんの感想と俺を貰っていて。
表現するなら似たような言葉が一つあるような気がするがそれは絶対に違うから、言葉にすることができないのだ。
ならばきっと捕食者と被食者で構わないのだろう。ごはんとお菓子に釣られた俺は、お腹がいっぱいになって美味しくなったところを食べられているのだ。
「ヒュウガ。」
聞こえて来た声に顔を上げると、片付けを終えたカツラギさんが近づいてきてひょいと首を曲げた。
「私にも一粒頂けませんか。」
「いいよー。」
テーブルの横に着たカツラギさんにお皿を上げて渡すと、彼は受け取らずに首を曲げたまま困ったように笑った。
そのまま何も言わないでいるので、まるで謎かけだなと思いながらもお皿を戻してフォークを手に取る。
「はい、あーん。」
つぷりと刺して差し出すと、カツラギはさも嬉しそうに笑って腰を曲げフォークの先にある赤い果実を口に含んだ。
「ありがとう、ヒュウガ。」
ご満悦といった体で租借しながら言うので、なんだか恥ずかしくなってどういたしましてどういたしましてといいフォークを刺し自分もイチゴを頬張る。と、
「間接キスですね。」
*それはまるで○○の関係*
「ただいま!ってあれ?ヒュウガどうしたの?」
「さあ、その内回復するでしょうし、気にしないでおきましょう。」
「カツラギさんひどい・・・。」
END
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