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□■katsuragi×Hyuuga List
要看護
『弘法も筆の誤り…と申すのでしょうか。貴方が怪我するなんて珍しい…』

顔に擦り傷、軍服の上から浅いながらも左腕に切り傷。
さらに大腿にも。
こちらは腕より深く大きく裂けている。

本人はというと、ピンシャンしており、別段命に別条がある・という様子はない。

「痛いよ、大佐。消毒液が凄く沁みる…ッタタタ、イタイって!」

『痛いぐらいがちょうどいいでしょう……普段怪我をすることなんてめったに無いわけですし…』

「ちょっとそれは偏見だよ?アヤたんが上層部にイジめられてストレス溜めこんでいるのを、俺が全身で受け止めてフォローしてるじゃん。甲斐甲斐しいったりゃありゃしないよ?」

『自分で言うあたり、甲斐甲斐しいも何もありませんよ。それにあの鞭うちは間違いなく貴方自身への罰です。ストレスが原因じゃあありません。』


消毒を終えたコットンをピンセット諸々と金属ケースに置くと、今度は痣の酷いところへと湿布を貼った。
痣は幸い、どれも大した事はない。
小さい湿布で事足りている。


「だーかーらーそれはアヤたんがストレス溜めてるだろうなっていう行動。わざとだよ?」


湿布を貼られる際、僅かに体を竦めるが まるで己の非を認めようとはしない。
恐らく、彼は本気でそう思っているのだろう。
しかし、傍で見ていると逆にうんざりとしたアヤナミ様が視界に入るのだ。
何処までもすれ違い、思い違う…奇怪で複雑な仲なのだ。


『また惚けたふりをする……さて、服を脱いでください。』

「こんな昼間っから、カツラギ大佐ったら大胆だなー。」

『これ以上冗談が過ぎると、本当に酷い目に遭わせますよ?』

「ごーめんごめん★冗談もこのぐらいにしておくよ。」


ブーツを脱ぎ棄てると、上衣はそのままに 下だけずるりと脱ぎ捨てた。
大腿の傷は、予想通り深く 皮膚が痛々しく抉れている。


『縫うとかいうレベルじゃないですね。皮膚が一部もろにないじゃないですか。』

「あーそうだねー、これはもう黒法術レベルだと思う。」

『本当に怪我なんて珍しい…しかし何をやってるんですか。こんな怪我で飄々と普通に歩いてくるなんて。コナツに肩を借りるぐらいなさっても良かったでしょうに。』

「イタタタ…痛いって、、ちょ・消毒液かけないで!」

『こうでもしないと 貴方は何一つ言う事を聞きませんよね?』

「もう…!本当に痛い!やられた時より、今の方が倍痛いよ!ジンジンするし!」

『まともな痛覚あって安心しました。もうちょっとしっかり消毒しましょうか。』

「だぁぁぁぁ!痛いから!ごめん、本当に今後気をつけるから!」

『はいはい、今度聞きますね?』



これはきっと、傷から熱が出るだろう。

消毒をしっかりしておけば、破傷風などにはなりはしないだろうし
あとでキッチリ傷をふさぐわけだから問題もないが傷を受けている以上
疲弊は否めないし、普通に熱は出るはずだ。


ここでの問題は、熱に気付かない・あるいは気付いても無視するという 本人の不摂生が問題なのだ。


『申し訳ありませんが、今日は私の部屋に来てくださいね。』

「ええ、どういうこと?」

『傷が酷いから、恐らく今晩熱が出ます。一日だけの辛抱ですから、私の部屋に泊まりに来てください。』

「別に大丈夫だって!熱ぐらい。」

『そうやって不摂生を積んでいき、いざという時アヤナミ様が守れなかったらどう言い繕うつもりですか。』

「…手厳しいなぁ、それ言われると まぁ…うん、そうなんだけどね?」

『素直に言う事を聞いてください。』

「でもさ、俺結構体丈夫だし!小さいときからこういうのは自然治癒で済ませてきた方だから案外自然にしてる方がいい気がするんだ?」

『貴方の好物のカツ丼を用意しますから、今日は泊まりに来てください。』

「え!カツ丼用意してくれんの?…カツラギ大佐の料理美味しいからね、それは是非頂きたいな」

『本来ならお粥などがベストなのですが、そこまで丈夫と言い張るなら、食べ物ぐらい好きなもので構わないでしょう。』

「さっすがカツラギ大佐★話がわかるーー♪」

『調子に乗るのも大概になさい。』

「はーい、それじゃー大佐。あとで泊まり道具もって部屋にいくね」


手当が済むと、衣服を整えて ヒュウガはゆっくりと立ち上がった。
傷口を癒すなら、後で部屋でゆっくりとやればいいだろう。

軽く足を引き摺りかけるも、医務室から一歩外に出ると ヒュウガは何もなかったかのようにスタスタと歩き始める。






やれやれ、本当に困った人だ。


ああして、傷を負っても誰にも見せず 一人で抱える。



それは動物の本能に近い行為だ。

傷という弱点を、決して見せようとしない。

生き物の気配の無い、たった一人きりの場所で そっと一人で傷を癒そうとする。







滅多に怪我をすることはないけれど、今回ばかりは「要看護」だなと思う。

次にまた怪我したとき、一人で抱え込む事がないように。




END


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