el paraíso |
とても、とてもきれいな夢を見た。 そこは明るくて柔らかで。 どこかで見覚えがある、だけど、どこでもない場所。 つむじ風に、花びらが舞い上がる。 白、黄色、薄桃色。私の視線を遮る、色、色、色。 温い空気と、立ち込める優しい匂い。 私の五感は生きている。 それなのに、体だけが動かない。 ううん、最初から体なんてないのかも。 私なんてないのかも。 それじゃあ、今こうして考えているのは一体なに? ワタシって、なに? 色彩に包み込まれた視界が、少しずつ解けていく。 淡やかな金色の草原の中に立つ、二つの人影を見た。 それが誰だか、私は知ってる。 光に溶ける金色の髪をした青年。 翠緑玉の瞳を持った美しい女。 私の大切な幼馴染み。 私の愛する親友。 二人は向かい合わせに立って、微笑み合う。 両手を握り、 幸せそうに。 お互い以外の全てが、溶けてなくなるような、 そんな微笑み。 綺麗。本当に綺麗で、 私は、言葉を失った。 声も目も耳も頭も、全部奪われた。 だけど、そんなもの必要ないのだ。 それは、あまりに完璧な世界で、 私が存在していい隙間なんてほんの少しだってない。 あるのは、 ぎゅうっと痛む真ん中だけ。 心なのか頭なのか、分からない場所がどうしようもなく痛かった。 それはとても、とても美しく夢だった。 美しく柔らかく優しい。 この上なく、幸せな夢のはずなのに、目を覚ますと、私は泣いていた。 冷たいカウンターに突っ伏して、捻れて固まった首がじんと痛い。 たった今動き始めたかのように、どくどくと鼓動を刻み心臓が痛い。 目の奥から無理やり涙を搾り出したら、脳がずきずきと痛い。 真っ暗の闇一色に包まれて、 私はひとりきりだった。 熱い風呂に入りたい。 そして涙も痛みも、くだらない自己愛も、 全部、拭い落としてしまいたい。 ああ、誰か。 誰か私を殺してください。 [*前へ][次へ#] |