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shampoo




頭の高いところで髪を結わいて、それをぐるぐる捻ってお団子にしてた。
珍しいね、とみんなが言う。
私は、気を良くして、たまにはいいでしょう?って笑った。

お風呂に入るとき、止めていたU字ピンを外したら、自由を喜ぶみたいに、髪はするする流れ落ちた。
クセを残してよじれた髪。
鏡に映った自分を見て、私は誰かを思い出す。
私の真っ黒の髪では、ちっともふわふわなんかに見えなくて、緩やかに捻れてるそれは、単なる寝癖かぼさぼさ頭みたいだった。

結わいたゴムを力任せに引っ張って、シャワーの中に急いだ。
小さな痛みとともに抜けた長い髪が一本、私の指に絡みついた。

シャワーがお湯になるのも待たないで、頭から水を被った。
髪の毛は、水の流れと一緒に、滝になって落ちる。
早く。
むやみやたらに、たくさん、シャンプーとリンスを使う。

まっすぐになれ。まっすぐになれ。


「いい匂いがする」
湯上りの湿った髪の毛を、一束掬って唇で触れる。
私は、もうしばらくシャンプーを変えてない。
見え透いていて、自分でもイタイタしく思うけど。

彼がこの匂いを覚えてくれればいい。
この匂いを嗅ぐ度に、私の匂いだ、と思ってくれればいい。
その、ひんやりした感触を思い出してくれればいい。



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あきゅろす。
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