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恋するあの子は無表情
20


静まり返った部屋にピチャピチャと、水音が卑猥に鳴り響く。

俺からしてみれば正に 地 獄 絵 図 。


「ん…ぁ…司様っ…」

見たくもなかった野郎同士の長い長いキスがやっと終わりを迎えた。

タイミングとしてはあまり良くないが放っておくといつまで立っても部屋に入れなさそうなので、不本意だが俺は声を掛けた。


「…あの…」
「んー?」


おぞましいキスシーンを見せておきながら本人は何でも無いような顔をしている…。

気にくわん…
そっちがそう来るなら俺だって返してやるさ。


俺は静かに頭を下げて言った


「…編入してきました。笹本文人と言います。…不本意だが、今日からお世話になります。」

「え?」
「は?」



なんだか今日は初対面な奴に俺にしては珍しくめちゃくちゃ喋りかけている…超頑張ってる。

編入初日だから仕方ないだけど…。
疲労感半端じゃないぜ。


「…。」


そして美形と美少年がアホ面で俺を見ている。
ザマミロ美形が台無しだぜ!
写真とって涼太にも見せてやりたいくらいにな。


「ぷっ…」
「……?」


美形…というか、さっきから司様と呼ばれているので、麻生司であろう人物は腹を抱え、肩を震わせている。


「…司様?」

美少年が心配そうに見つめているのをよそに、麻生司は

「あっははははは!」


と、大笑いしている。




ーーーーー


「あー、笑った笑った…」

麻生は涙を拭いながら言った。


俺としては、何1つとして面白くないんだがな。


「ふぅ…君、面白いね」

麻生は妖しく笑い俺に一歩近づく。

こっちくんな。



「あーっと、なっちゃんは帰って良いよー?」

と、麻生はチラリと後ろを振り返って美少年に微笑んだ。

笑顔でそうは言っているが、口調は帰れと言っている。


「ぁ…はい…。」

なっちゃんと呼ばれた美少年は切なそうな表情を浮かべ俯き、乱れた着衣を整えて部屋を出た。


一瞬だけ、俺は横目で見られたのを感じた。



「さーて、なっちゃんが帰ったところで…」


お前が帰らせたんだろ、とは言わないでおく。


「君、名前何て言ったっけ?」

…覚えてないんなら放っておいてくれてもいいんだけどな。


「………笹本文人、です。」
「文人……あやちゃんだね。」
「いやです。」


あやちゃんだと…?涼太にも呼ばれたことないのに?ふざけんなっての。


思わず即答してしまった…


「あははっ、あやちゃんは何考えてるか分かんない顔してるね」

やかましいわ。

つかスルーかよ…結局あやちゃん呼びかよ。
大体、俺が無表情なのは人見知りだからだ!…と思う。


「俺は麻生司。皆からは司様って呼ばれてるよ」

自分で言うか。

「でも、あやちゃんは同室だし、特別に司って呼んでも良いよ?」
「麻生さんは何年生ですか。」
「ありゃ…スルー?」


誰が司なんて呼ぶかよ…馴れ馴れしいにも程があるだろ。
どうも調子が狂う…つかコイツが苦手なタイプなんだな。


「まぁ、文ちゃんが俺の事苦手なのは良いとして…」


即バレだと…。
もしかして顔に出てた!?すっげぇ…
なんか…嫌な奴。


「…ふーん、へー。」
「…。」


麻生が俺の顔をジロジロ見始めた。

なんだよ、うっとおしいな。
不快感MAXなんだが…。


「あやちゃん、イケメンだね…。」

麻生はニッコリと、嫌味なくらいに満面な笑みを浮かべた。


お前がそれを言うか。

「……はぁ…そりゃ、どうも。」
「俺の好みじゃないなぁ〜」
「は、?」


 こ の み … ?


「もう少し、身長が小さくって、目がうるきゅるで、ほっぺぷにぷにで、髪の毛フワフワだったら好みだったのになぁ…。」


う、うぜぇぇえ…!!
なんだコイツは!


誰だ、俺と麻生を同室にした奴…。


んな残念そうに言われても俺のナリが変わるわけ無いだろ。麻生は俺に全身整形しろ。とでも言っているのか…?失礼すぎんだろ!アホか。


「…俺、別に麻生さんの好みにはなりたくありませんし…。」
「そう?まぁ、いいや。あやちゃんじゃなくても俺には可愛い子ちゃん達いっぱい居るしぃ…。」

ケタケタと麻生が笑っている。

「ソウデスカ…。」

部屋は安息の地だと思っていた俺が間違いだった。

麻生と居ると矢吹さんより理事長より疲れる。おーどー君とどっこいどっこいだな。



涼太が恋しい…。


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