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恋するあの子は無表情
19


涼太と別れたあと、俺は自分の部屋へ向かった。

508…509…と、510…ここか。
部屋の前、ドアの横には部屋の使用者の名前が書いてある表札があった。1つはこれから俺の名前が入るであろう空白、もう一つには麻生司(あそうつかさ)と書いてある。


あそうさん……か。

同室の生徒の名前を確認して、部屋に入るための鍵を取り出す。


鍵はプラスチックのカードみたいなもので、ここでは授業に出席した時このカードを教室に備えられている機械に通す…らしい。タイムカードみたいなもんだな。

面倒くさいが、単位に関わる重要な事だ。

これで個人も特定でき、更にはGPS機能もついているとか…。

金持ちの学校はやることがえげつねぇよな…。
なくしたら一大事だと言われたし…気をつけねーと…。

俺は早速、カードリーダーに鍵を通した。


ピピッ!カチャン

軽い電子音のあと鍵が開く


「……お邪魔しまーす…。」


今日から自分の部屋だけど一応な…。
同室者が部屋にいるかもしんねぇし。


「…?」


部屋に上がろうとして、異変に気づいた。



「……?」



靴が…2つ?
それも、明らかにサイズが違うのが二足…。

でも確か、同室は1人だけのはずなんだが…

「あっ…」
「ん…?」

靴を眺めていると部屋の中から声が聞こえてきた。


「……。」


顔を上げると、乱れた服装で頬を僅に染めた美少年が…。


「……。」


なぜ半裸なのか…


思わず真顔で凝視してしまう。

もしかして同室の麻生さんってこの人…なのか?
とんだ美少女…じゃねぇ美少年じゃねぇか。涼太と親父が喜びそう…つーか親父が書いてる本の表紙とかにいそうな感じがする。

俺が真顔でじっと見ているからなのか、相手も俺の顔を困惑したまま少し潤んだで見つめている。


「っ…」


と、視線を逸らして更に赤くなる美少年。
何故赤くなる。なんだその顔は。


「……あの」


声をかけようとしたその時。



「なっちゃーん?まだ居るー?」
「ぁ!…司様…!」



部屋の奥から半裸の美形が現れた。



…なぜこの人らは揃いも揃って半裸なのか。





「んーっと……君、だれ?」

突如現れた美形は俺と美少年を交互に見た。


「もしかしてぇ…なっちゃんの彼氏?」


美形は妖しく口元を歪めて、俺ではなく美少年に聞いた。


「そんな…!僕は司様以外の男に興味なんてっ…!!」


縋るように涙目で訴える美少年…。
それを見て満足そうに微笑み、俺に向けて勝ち誇るようなドヤ顔をしてくる美形。


「…。」


……すっげぇむかつくんだけど。勘違いしてるかもしんねぇーけど彼氏じゃねぇし!!部屋開けられたんだから入居者に決まってんだろ。


「…へぇー、かわいいコト言うじゃん…」


そう言うと美形は美少年に近づき、俺の見ている目の前で美少年にキスをした。



「…ハァ」

常識知らずばっかりだ…。
俺は涼太じゃねぇんだぞコラ。

無表情な溜め息が出た。



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