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恋するあの子は無表情
18


理事長室を出て、俺も冷静さを取り戻した頃、俺達は学校案内の印を確認しながらなんとか寮まで辿り着いた。



「んじゃ、俺はここだから」
「おう、また後でな。」
「ラジャッ!」

503号室の前で涼太と俺は別れた。

おーどー君とは1階ロビーでとっくにお別れ済みだ。ラッキー。

因みに、別れ際。おーどー君が終始煩かったのは…言うまでもない。




ーーーーーー数分前ーーーーーー
No.side



『えーっ!?何でだよ!!何で俺の部屋だけ階が違うんだよ!!』
『そう言われましても…』

寮長に文句を言う王道くん。
苦笑混じりで困り顔な寮長。

『……。』
『あーっと、文人。逃げるのは無しだぜ』 
『なぜ……』


涼太に首根っこを掴まれ逃げられない文人。


『おーい、王道くん、決まってるもんは仕方ないだろ?寮長困ってるぞ。』
『だって!!涼太と文人は五階で俺だけ三階なんて不公平じゃん!!』
『う〜〜〜ん…(俺的にはラッキー)』
『俺的にはラッキむぐ…』
『なぁ!涼太もそう思うだろ!?』

グイッと涼太に距離を詰める紗夜

『おっほ!王道君標準装備の上目遣い、いただいちゃったぜ!でも俺より文人のが良かったな!!』
『は?何言ってんだ涼太?』
『ん〜、でもまぁ…今は仕方ないよな〜…』

沙夜との距離を更に縮める涼太


『っ!?な、なんだよっ』
『紗夜くん、ちょっと静かにして』
『なっ』

ソッと沙夜の頬を撫でて、耳元で囁く

『俺が会いに行ってやるから、それで我慢してくれないかな?……だめ?』




『っ!!?やめろよ!!』


赤くなって涼太の手を振り払う紗夜


『なーんて!あっははー、キモかったよな!ごめんごめん!冗談だって!!』
『〜ッッ!』
『……涼太…』

心配そうに涼太を見つめる文人


『ん?』
『大丈夫…なのか…?』
『冗談だって言っただろ?』
『でも…あいつ…』


頬を赤く染め、なおも騒いでいる王道くんを見て言う


『ありゃりゃ、火に油を注いじゃった感じか?やっぱ俺みたいな平凡が何やったって格好つかねぇよな〜…ちょっとショック!王道君面食いっぽいし、やっぱ文人が言ったほうが…』
『ころすぞ』
『ひぇぇごめんて!!』

笑い飛ばす涼太


『…!!…、…おい!!聞いてんのかよ!?』
『あーはいはい。…文人、走るぞ』


王道君の隙をついてエレベーターまで走り出す二人


『!?!ッおい逃げんなよ!!』


追いかける王道くん


『あー!!あんなところにイケメンがっ!!』


振り返り、走っている方向の反対を指して叫ぶ涼太

『な!?』

思わず涼太の指した方をみる王道くん

その隙にエレベーターに素早く乗り込み五階ボタンを押す

エレベーターが動き出すと同時に追い付いた王道くんは上がっていくドア越しに騒ぎ立てていた。

『やっぱ面食いじゃねーか!腐男子の目に狂いは無かったぜ!!』
『…お前、こわいな。』
『なーんでぇ!?』


ーーーーー



そして今に至る…。


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