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恋するあの子は無表情
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side.智宏@


転入生三人が慌ただしく出て行った理事長室。



「ふぅ…。」

甥が転入して来た日。
私はこんな歳になったにも関わらず、胸が高なるような、むず痒いときめきを感じた。


最初は本当に僅かな興味だった。
裏表があるように見えて意外と素直な、冷徹副会長の矢吹くんが大層気に入っている様子だったから…。

そして、迫られているのにピクリとも動かないその表情を。

崩してみたい…と、そう思ったんだ。


最初は口数も少なくて中々視線も合わないので、あぁ、人見知りなのかと…興味はそこで薄れかけたのだけれど。

注意深くよく見ていると、微かだけれど口元や目元は緩く変化しているのに気がついて…。

彼の手を取りキスをした。
僅かに戦慄く唇と、釣り上がった目元。
そして、赤く染まった首筋と頬。


「…かわいい子だ。」

頬が綻ぶ。



私の小さな呟きは、静かになった部屋に大きく響いた。

この感情には、まだ名前を付けないでおこう。




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