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恋するあの子は無表情
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「っという事だ。解ったか?沙夜。」
「マジかよ!まぁ、俺はホモじゃないけど、そういうのに偏見はねぇから!」
「それならいいんだ。」


理事長の、ざっと30分ちょいくらいの長きに渡る説明を聞いて解ったことを俺なりにまとめさせてもらうと

ここは全寮制男子校
男同士の恋愛可
親衛隊あり
学園のほとんどの役員は抱きたい、抱かれたいで決まる

という事らしい。


2つ目までは頷けるとしても、それ以降は無茶苦茶だと俺は思った。なんだよ抱きたい抱かれたいって…不気味すぎんだろ…。ていうか高校に親衛隊あるってなんなんだよ。アイドルかなにかか…

親父がめちゃくちゃ喜びそうだな〜と隣の涼太のリアクションも見つつ感じたが、俺はこの学園のシステムを深く考えることが恐ろしくなってきたので考えるのをやめた。

俺には到底理解できない世界もあるってことだな…

というか、話の途中からちらほら気になっていたんだが…



「…理事長」
「何かな?笹本君?」
「…。」


歳も若く、整った顔を満面の笑みにして聞き返す理事長…なんだけど。


「…何か、近くないっすか」
「そんな事はない!…普通だよ?」
「…。」


いや、近いだろ。
あ、涼太この野郎。ニヤニヤすんな。


「話は変わってしまうが、笹本くんにぜひとも聞きたいことがあるんだけれど…いいかな?」
「…?」
「…矢吹君とはどういう関係?」
「ブフっ!!」
「うぎゃあっ!!汚ねぇぞ涼太!」
「おう、悪ぃ。」


理事長の質問に、涼太が勢いよくお茶を噴き出した……全て無事、おーどー君の顔面に向かった。


つか、ホントに何なんだ。この理事長。

「…質問の意味が解りません。」


矢吹さんとどういう関係…?
今日初対面。出会ったばっかの生徒会副会長だろーがよ。


「じゃあ、質問のしかたを変えようか。君と矢吹君は恋人なのかな?」
「…は?」

「ブフー!!!」
「おいっ、涼太いい加減にしろよ!汚ねぇから止めろって!!」
「ゲホッ、ゴホッ!ほんとごめ…!し、しぬ!!」
「俺が死にそうだっての!!!」



俺と矢吹さんが恋人?


「ぜっってぇあり得ません。」
「おや、そうかい。」


理事長、変わった人だな。
略して変人だな。

俺の中で理事長は変人にカテゴライズされた。


相変わらずニコニコしている理事長に突如、おーどー君が、俺も涼太もすっかり忘れていた爆弾を投下した。

「ていうか、叔父さん!文人は涼太と付き合ってるんだぜ!」
「…ん?」
「あ、」
「……ハァ。」


…余計なことばっかり言いやがる。




「どういうことか説明してくれるかな?沙夜。」


おーどー君が涼太と俺が付き合っている、という涼太の口から出任せの情報を理事長に言ってからだろうか、理事長の纏う雰囲気がこう…妖しくなった気がする。

そんな様子にも気づけない鈍感なおーどー君は今も、全て涼太の出任せだが俺達のことをベラベラと話している。

「だーかーらー!涼太と文人は恋人同士で、文人はすっげー妬きもちで涼太はダチが作れないから、俺が文人を説得して涼太のダチになったんだ!」


おーどー君よ、胸を張って誇らしげなとこすまないが、理事長の纏う空気は重くなる一方だぞ。隣にいて気付かないのか。気付けないのか?バカなのか?


「…。」

突然、おーどー君の話を黙って聞いていた理事長がゆらりと立ち上がり、テーブルを挟んだ向かい側にいる俺の前に屈んでガシッと両手で顔をつかんできた。


「!?」
うぉ!?びっくりした!なんだ!?


理事長の行動の意図がつかめず、困惑する俺に、理事長は
「本当に君達二人は付き合っているのかい?」と聞いてきた。なにこれ。



えーー…っと…

「…涼太。」

どう答えようか迷い、涼太を頼ったところ…

「本当のこと言っても俺は別にいいぜ。文人に任す。いずれバレるし?」


となにやら意味深な感じで言われたが…


「俺と…涼太は…そんな関係じゃ、ないです。」


素直に本当のことを言った。

すると理事長もおーどー君も、ポカンと口を開けたまま固まった。が次の瞬間、理事長は満面の笑みを浮かべた。

「そうなんだ…それじゃあ私にもチャンスはあるんだね?」



…ん?
んんん??


理事長の言っている意味がわからず俺が頭に?を浮かべまくっていると理事長は俺の両手を取り、自分の両手で包んでだ。


「なに、単純なことさ。君に興味が湧いたんだ。笹本文人くん?」

そう言って理事長は、包んだ俺の手を引き寄せてそっとキスをした。

「っは…!?」
「ふおぉっ!?」
「ちょ、叔父さん!?何やってんだよ!文人も手離せよ!」


いや、別に俺から握ったじゃ…。
てかそういう事じゃなくて

「…理、事長?」
「ん?なぁに…」

理事長はおーどー君に向けていたソレとはまた違う視線を俺に向けて、なんつーか、艶っぽい笑みを浮かべている。

今俺の手にキスした…よな。なぜ。そしてまだ手は握られたままで、時折優しく、指で手の甲を撫でてくる。

「…っ」

なんだ、これ…

なんかこれ……

めちゃくちゃ恥ずい!!!


「!……かわいいね。」


理事長がなんか言ってる気がするけど無視だ。


俺は状況を客観視してしまい、カッと頭に血が上った。

最悪最悪!!なんだよこの状況!?気色悪いだろ、こんなの…ッ、涼太慣れっこだろ助けろコラ!!

「…っやめろ下さい!」

すきを見計らって勢い良く手を引き抜いた。
変な敬語使った気もするが変人理事長には十分だろう。

うおおぉぉ!鳥肌立ってるやべぇ!

俺はキスされた面をゴシゴシと擦って今のを無かったことにした。
理事長はショックだなぁとか全然ショックじゃなさそうな声で言ってるけど知らん。
涼太が隣で悶えてるとか、おーどー君がさっきからギャーギャー騒いでるとかそんなのも知らん。


「…けど、やっぱり無表情なんだ。顔は真っ赤だけどね。」
「…るせっ!おい涼太…!」


相手が理事長だとかそんなのも知らん!これはセクハラだよな。どう考えてもセクハラだよな!?


「俺等もう行きます。失礼しました。」
「残念、またね笹本くん」
「…。」

「あ!オイ!!待てよ!!あーと、じゃあな叔父さん!また来るよ!」


俺は隣で未だ悶えてる涼太の腕を引き上げ理事長室を後にした。


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