恋するあの子は無表情
12
「笹本君!」
「…。」
どうしてこうなった…。
俺は、今矢吹さんに迫られている。多分。
十中八九、俺が矢吹さんのことを「タイプかも…」と 言ったのが原因だろう。
アホか!初対面でイキナリ恋愛感情でタイプなわけねーだろ!!
誤解されている。ここが元々、同性恋愛の多い自由な学校であることは親父から聞かされていた。むしろそういう学校だから親父は俺を放り込んだんだろうけど…各言う俺も、そういうのに偏見はない。だから転校も認めたし受け入れられた。
だ が 、それは他人がそういう恋愛をする場合であって、俺は決して男が好きな訳じゃないことは確かだし、どんなに親父が狙っていてもこれは揺るぎない。
普通に…女の子が好きだし、付き合った経験もある。言っちゃなんだが同じ男を俺がそういった意味で好きになる訳がない。
だのに…!!
「説明して下さい。」
「えー…とぉ…なんのこと…」
「わかってるよね?」
「はい。」
やっぱり、矢吹さんは怖い。
「あ、の……誤解、です。」
「ん?」
「矢吹さんのことは、好きなタイプかもしれません…。
でも、それは人間的な意味で、…もし友人として付き合った場合〜…の話でして…決して恋愛感情には発展しないので、あの…安心して、下さい。…俺は同性愛に偏見はないけど、女の子が好きなんで…。」
「…。」
よっし!!今ので初対面会話記録更新だろ!!多分一生分ぐらいの緊張を使い果たした。俺超頑張った。もうなにもしゃべりたくない。
なんだ涼太そのガッカリした、みたいな目は。ふざけんなよ。
ーーーーーーー
「…。」
「………。」
何だこの空気…
重すぎんだけど…。
「や、矢吹さ…」
「じゃあ…、」
「…???」
重すぎる空気に耐えられず、口を開いた俺と同じタイミングで矢吹さんも何か言っている…?
なんだ?
「…じゃあ、君はこの学校で恋人を作るどころか、男と付き合う気は一切ないということだね?」
「…。」
無言で頷く。
「…でも、それは君が告白された場合、だろう?」
「え……まぁ、そういうことスかね…?」
単純に考えるとそうだよな…?
俺は男から告白されても困るし、俺から告白することは絶対ねぇし。
「ということは、君から告白する場合は別なんだよね…?」
「…はい…?」
いやだから俺から告白することは絶対ねぇって…矢吹さん…?物凄く嬉しそうに閃いたって顔して笑ってますけど、悪い顔してますよ…?
涼太もキラキラした目で矢吹さん見てっけど?
何を企んでいるんだ…。
嫌な予感がする。
「つまり君を、僕に惚れさせれば良いわけだ…?」
「……。」
嫌な予感が当たった…。
そして涼太は
「腹黒美人副会長攻めありがとうございます!!!!」
とか叫びながら高速でメール打ってた。とりあえずお前は後で殴る。
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