恋するあの子は無表情
5
門を横切って校内に入る。
「あ。」
涼太…置きっぱだわ。
…まぁ、いっか。
歩き出そうとしたその時、
「あぁーーーーーー!!」
「!?」
……ビビった。
「あんた、ここの転入生か!?」
「…。」
それはお前もだろ…。
俺は目の前のまで来た黒いモジャモジャ、もとい、おーどー君を見下ろす。
やっぱキモい。これは無いわ。いくら意見で人を判断してはいけないとはいえ、このヘアスタイルはいただけない。せめて最低限整えろよな。
「なぁ!聞いてんのか!」
「……うるせ。」
俺は、ほんの少し
本当に涼太や親父にしか解らないぐらい少しだけ、顔を歪める。
「なっ!そんなこと言うなよ!失礼だぞ!」
おーどー君は無表情で言い放った俺に、さっきより更に音量を上げて噛み付いてきた。
おーおー、うるせーっての。謝るから静かにしてくれ。
俺、こいつ…苦手だ。
ただでさえ感情を表に出すのが苦手で、尚かつ人見知りな俺にコイツは難易度が高すぎて無理だって…。
助けを求めようと振り返って涼太の方を見る。
涼太は苦笑しながらも来てくれた。
ホッと息を吐く
「……涼太。」
「は?涼太…?って誰だよ!」
「俺だよ。」
涼太は愛想笑いを浮かべながらおーどー君に近づく。
「お前が涼太?俺は杉崎沙夜って言うんだ!沙夜って呼んでくれ!よろしくな、涼太!」
…おーどー君は自己紹介を終えると、涼太に握手を求めている。
「んあー…と、ごめん。俺、ここではこいつ以外とはよろしくしない事にしたんだ。」
涼太は俺を指差して言う。
なんだそれ、初めて聞いたぞ。
お前ここに来たら真っ先に学園にいるチワワ?によろしくするとかなんとか言ってなかったか?
「なんでだよ?何でそいつだけなんだ?」
おーどー君が首を傾げる。俺も首を傾げる。
「それはまぁ、アレだ。」
涼太は意味有りげに微笑むと、俺より小さいくせに、俺の肩を抱いて堂々といい放った。
「俺達、付き合ってるから。」
……は?
いま、なんて?
「おい涼…」
「こいつ嫉妬がすごいからさ、俺が他の奴と話してるとすっげー睨んでヤキモチ妬いてくるんだよな〜。ま、そこが可愛いんだけど。だから、こいつを不安にさせない為に俺は特別仲の良い親友とか作らないようにしてるわけ。おk?」
俺の言葉を遮って涼太は、ノンブレスで言い切った。
やっぱこいつ地中海に沈める。
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